家守綺譚

4.06
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本棚登録 : 3428
レビュー : 619
著者 :
まろんさん な行の作家   読み終わった 

着古された和服の生地に、柔らかな筆字で『家守奇譚』、
ひと枝の南天が紅を添える、美しい表紙。
見返しに描かれた白鷺、一面の雪景色の中の白い笠と黒い衣。
最後の頁にぽつんと添えられた、家守の這う蔦の挿画。

この物語の世界を余す処なく表現してくれている装丁に
読者として深い感謝を捧げたくなるくらい、素晴らしい本です。

湖、疏水、用水路、田圃、池、床の間の掛け軸の水辺。
主人公の綿貫が住まう、亡き旧友の家を取り巻く湿った空気が
この世のものではない存在を呼び寄せるのでしょうか。

木肌を撫でてくれる綿貫に懸想して、もの言いたげに揺れるサルスベリ。
そんな彼女(?)のために、根元に腰を下ろして本を読み聞かせる綿貫。

床の間の掛け軸の水辺から、ボートを漕いで現れ
生前と変わらぬ口調で語りかける亡き友の高堂。

風流を解し、河童を救って仲裁犬としてその名を轟かせ、
隣に住む犬好きのおかみさんから、主人の分の食糧まで融通する飼い犬ゴロー。

雷に打たれて孕んだ白木蓮の蕾から、天をさして昇っていく白い竜。

庭の片隅で、満開になる木槿に助けを借りて降臨する、儚げなマリア像。

竜田姫の竹生島参りの侍女が乗り移った、上半身は女人、下半身は鮎の人魚。

黄泉の国へと嫁入りする幼なじみに白いサザンカの花を手向け
幻の汽車を待つ間、綿貫と共にゲーテのミニヨンの歌を口ずさむ、ダァリヤの君。

墨をたっぷりと含ませた筆でしっとりと原稿用紙に書きつけられた文字が
ゆらりゆらりと形を成して実体化してきたような摩訶不思議な感覚に
うっとりと呑み込まれ、いつのまにかその湿った空気を肌に纏っている。。。

そんな世界まで連れていってくれる、稀有な物語です。

レビュー投稿日
2012年8月21日
読了日
2012年8月20日
本棚登録日
2012年8月21日
12
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『家守綺譚』のレビューへのコメント

nejidonさん (2013年2月26日)

はじめまして。フォーロー&コメントをいただき、ありがとうございます。
読まれた本のすべてにレビューを書かれていることに感心することしきりです。
さてどの本にコメントしようかしらと物色して(笑)していたら、この本にたどり着きました。
ずいぶん前に読んだのですが、印象に強く残っている一冊です。
異形のものをこんなに美しく愛おしむように書いた作品は珍しいですよね。
また素敵な作品に出会ったら教えてくださいね。楽しみにしています。
なお、猫は15匹に増えました。可愛いから構いませんが、時々大変です・笑

まろんさん (2013年2月26日)

nejidonさん☆

コメントありがとうございます!
暇に任せて長々と書くばかりのレビューを物色(♪)していただけて、光栄です。
本を開いたとたん、湿った空気がたちこめて
乾ききったお肌も潤ってしまいそうな、風情のある本ですよね。

なんと、10匹でもうらやましいのに15匹ですか!
もはや猫天国ですね。素敵です。
プロフ写真の、頭にみかんをのっけてカメラ目線の猫ちゃんにも
見るたびうっとりしてしまいます(笑)
これからもどうぞよろしくお願いします(*'-')フフ♪

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