舟を編む

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本棚登録 : 24945
レビュー : 4024
著者 :
まろんさん ま行の作家   読み終わった 

言葉を愛するすべての人に、読んでもらいたい一冊です。

目をつぶって辞書を開き、その頁で見つけたお気に入りの言葉を
ノートに書きつけるのが大好きだった、幼いころの私。
若かりし頃は、初めてのバイト料をもらったボーイフレンドに、
「プレゼントは何がいい?」と聞かれ、迷わず「広辞苑♪」と答えたけれど
今ならぜったい、馬締たちが編んだ「大渡海♪♪♪」と答えるのに。

時間も金も食うお荷物部署扱いされ、予算も人員も削られても
常に用例採集カード片手に言葉を集め、時代に沿った語釈を捻り出し
十数年かけて『大渡海』を編纂する、玄武書房辞書編集部。

彼らが思い描く辞書は、「美しい日本語を守る会」のお歴々が厳かに頷くような
古式ゆかしい日本語が行儀よく陳列された、棺桶みたいな辞書ではない。
湧き上がる人の思いから生まれ、口遊まれ、綴られ、変化し、受け継がれていく
生きた言葉がひしめきあう、胸躍る世界。

何百年も受け継がれてきた言葉に心から敬意を払いつつ
時代の波に洗われて変わっていく言葉、新たに生まれ落ちる言葉も
大いに楽しみ、受け入れる『大渡海』の物語は
古今の名著も、漫画もBLも同人誌も、等しく尊重し熱愛する
三浦しをんさんが描くからこそ、こんなに心に響くのです。

そして、言葉に精通する馬締や松本先生や荒木だけを祭り上げるのではなく
辞書を開いた流れ者が、「西行」の項目に「遍歴するひと、流れもの」の語釈を発見し
心強く感じる光景を思い浮かべて、この語釈を採用すべきだと主張し
宣伝広告部に異動になり、辞書編纂に直接関わらなくなっても
馬締たちを渾身の力でサポートすると密かに誓う、西岡のような存在にも
ちゃんと光を当ててくれているのが、とてもうれしい。

ブクログのレビューを書きながら、本への思いが溢れ過ぎて
「ああ、またムダな言葉ばっかり!どうしてもっと簡潔に書けないの?!」
と自己嫌悪に陥る毎日。
そんな私の背中を、この本が、誰かに思いを届けるために
拙くても、不恰好でも、心を映した言葉を勇気をもって差し出し続けていいのだと
言葉の海に向かって、ぽん、と押し出してくれました。

レビュー投稿日
2013年4月18日
読了日
2013年4月17日
本棚登録日
2013年4月18日
34
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『舟を編む』のレビューへのコメント

macamiさん (2013年4月18日)

む、むだな言葉?ですか?
まろんさんのレビューにそんなものないです!
悪のない素敵なレビューばかりでいつもため息がでてしまいます^^

しをんさんてたしか四冊ぐらいしか読んでいません。
(伊坂さんに続いてまたそんなこと言ってます/苦笑)
でもさすがにこの本は気にはなっています。
まろんさんのレビューを読んだら一層・・・
そうそう、「あたしの一生」、すごく気になります!

HNGSKさん (2013年4月18日)

最近、紙の辞書を引く機会がめっきり減ってしまいましたが、紙の辞書を引いた際には、「ぬめり感」を確かめています。
 やはり、しをんさん、最高ですね。

マリモさん (2013年4月19日)

まろんさん♪

辞書って当たり前にありすぎて、だれかが一から作り上げているんだということを今更ながらに気付かされた一冊でした。

ところでプレゼントに「広辞苑♪」って答えたまろんさんがすごすぎます!(笑)
あ、でも同様の質問に「こたつ♪」と答えた私には何も言う資格なし…!

nobo0803さん (2013年4月20日)

まろんさんの手元にようやく届いたのですね♫
私は、この本は装丁が気に入ったので手元に置いときたくて買っちゃいました!(^^)!
本を読み進め、カバーをはずしたときに、ここに「大渡海」がある!と思ってさらに愛おしく思いました。
今、長男がちょうど国語辞書を購入しないといけなくて、何冊かの辞書の特徴を書いたプリントを先生がくれたみたいで、それを見ながら私も息子に「辞書はね、たくさんの人の思いがつまっているのよ!1つの言葉を調べても辞書によって書かれてる内容がちがうのよ!・・」と力説してしまいました。
辞書を選んでいるこの時期にぜひとも長男に読んでほしい1冊です。

まろんさん (2013年4月20日)

macamiさん☆

今日こそは簡潔に!と思いながら、いつも長々と書き綴ってしまうレビューを
思い遣りをもって読んでくださるmacamiさんのような
素晴らしいブクログ仲間さんがいらっしゃることが、毎日の張り合いになっています。
いつも本当にありがとうございます!

この本を読むと、ふだん使っている「右」とか「愛」とかの言葉を
どう説明したら自分らしい解釈が伝わるか、語釈対抗ゲームをしたくなりますよ♪
ひたむきな愛に触れたい気分なら、『あたしの一生』も、オススメです。ぜひぜひ(*'-')フフ♪

まろんさん (2013年4月20日)

あやこさん☆

「ぬめり感」とか、極薄でも裏うつりしていないかとか
この本を読んだ後は、いろんな辞書を引っ張り出して確かめてしまいました(笑)
「愛」の語釈がどんどん変わっていくあたり、しをんちゃんらしくてとても素敵でしたね!

まろんさん (2013年4月20日)

マリモさん☆

ほんとですよね!
十数年もかけてこつこつ作り上げて、完成したそばから、また改訂作業が始まって。
病室でも用例採集カードを手放さない松本先生とか、
辞書に名前が載らなかろうと、精一杯のサポートをするんだ!と得意な分野でみんなを支える西岡とか
ああいう人たちの努力の賜物なんですよね!

ちなみに、問題の広辞苑、今でも愛用しています(笑)
マリモさんの「こたつ♪」もいいなぁ! 私だけじゃなくて猫も大喜びするだろうし(*'-')フフ♪

まろんさん (2013年4月20日)

noboさん☆

ようやく読めました! そして私も、買っちゃおうかと思ってます♪
とりあえず、図書館の本だと表紙カバーが外せなくて、表紙の絵が見られないので
本屋さんでじっくり眺めてきました。
それにしてもこの本、読み終えるやいなや、家にある辞書が愛おしくなっちゃって
ああ、こんなにぞんざいに扱っててごめんね!って、あわてて埃を払いたくなりますよね。

長男くんに辞書の素晴らしさをいっしょうけんめい語っているnoboさんの姿、
想像しただけでほのぼのと、心があたたかくなります♪
使いやすくて、語釈に愛のある素敵な辞書を選んであげてくださいね!

だいさん (2013年4月21日)

〆の言葉、とてもよいのではないでしょうか。
まろんさんのレビューは、あふれる書物のなかを、十分ナビしていると思います。

まろんさん (2013年4月21日)

だいさん☆

いつも温かいお言葉をありがとうございます!
大好きな本は、やっぱり一人でも多くの方に読んでもらいたいので
「こんなに下手なのに一生懸命書いてるところを見ると、この本おもしろいのかも?!」
と思っていただけたらしめたもの♪ 
だいさんの励ましを胸に、レビューを書き続けたいと思います。

gudonさん (2013年4月22日)

まろんさん 

コメントありがとうございました。レビュー率100%に尊敬します。私のブクログは、実際の本棚同様雑然としていて、積読が多いのが難点です。

舟を編む、は実は小説は未読なのですが、先日映画を見ました。三浦しをんさんが、「この話は絶対映像化は無理」と自負していた世界を、石井裕也×松田龍平が見事に映像化してくれていました。

そうした「表現手法の違い」を楽しむことも作品の味わいだとよく思います。レビューを楽しく拝見しながら勉強させてください。

まろんさん (2013年4月24日)

gudonさん☆

こちらこそ、コメントありがとうございます。感激です!
積読の本がいっぱいあるなんて、素敵なことです。
お気に入りのお菓子を大事にしまってあるようなものですもの。

『舟を編む』の映画、私も観てきました。
静かな狂気を孕んだ役が似合うと思っていた松田龍平が、
浮世離れしたあの馬締くんを、あまりにイメージ通りに演じていることに驚いてしまいました。
大河ドラマの新撰組以来、三浦しをんさんがオダギリジョーの大ファンなのは有名ですが
西岡役を彼が演じているのを見て、「しをんちゃん、よかったねぇ!」と思ったりもして。

私こそ、映画のことも本のことも、gudonさんのレビューを拝見して
大いに勉強させていただきたいと思っています。

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