暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

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本棚登録 : 13750
レビュー : 1791
著者 :
まろんさん あ行の作家   読み終わった 

どうしてこんな、夢に出てきそうに怖ろしげな表紙?!
と首を傾げてしまうような、静かでうつくしい恋物語です。

3年前、不慮の事故で視力を失って以来、ほとんど家に閉じこもったままのミチル。
同僚がホームから転落死した事件の犯人として追われ、
ミチルの家に潜み、警察の追及から逃れようとする青年、アキヒロ。

ミチルが家の中にアキヒロの存在を確信するまでの
触れたら切れそうなほどに張りつめた空気が
お互いの存在を受け入れるにつれ、やわらかくふくらんで
孤独なふたりを温かく包んでいく様子が、ちゃんと伝わってくるのがうれしい。

強められすぎたストーブの火を、息をころして弱める。
戸棚の上からミチルの頭上に落下する土鍋を、隠れ場所から飛出し、受け止める。
ひとり暮らしだけれど、ふたり分のシチューを作って、テーブルにふたつ、皿を並べる。
ひとりで外に出る決意をしたミチルに寄り添い、目的地に辿り着くまで見届ける。

相手への思いやりから生まれる、アキヒロとミチルのひそやかな行動のひとつひとつが
あまりにやさしくて、せつなくて、こちらまで息をひそめて見守ってしまいます。

突然閉じ込められた暗闇の世界で、このまま静かに消えていきたかったミチルが
否応もなく踏み込んできたアキヒロを受け入れ、追っ手から守りたいと願い
人との接触を厭い、どこにも自分の居場所はないと思っていたアキヒロは
ミチルによって、必要だったのは居場所ではなく、
自分の存在を許してくれる人間だったのだと気付き

「暗いところ」で巡り会ったふたりが、頼りない身体と、頼りない心を支え合って
明るいほうへ歩き出す冬の日。
しびれるような寒さのむこうに、温かい春の光が確かに感じられて
幸せな気持ちになります。
怖い表紙に惑わされず、ぜひ読んでいただきたい物語です。

レビュー投稿日
2012年12月16日
読了日
2012年12月13日
本棚登録日
2012年12月16日
14
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