夜の国のクーパー

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本棚登録 : 5023
レビュー : 776
著者 :
まろんさん あ行の作家   読み終わった 

モーツァルトのオペラ作品で言えば『魔笛』、
シェイクスピアで言えば『テンペスト』のような、寓意に満ちた物語。

数ある伊坂さん作品の中でも、
リアルな道具立てで緻密に紡がれるタイプの作品がお好きな方には
「なんじゃこれ???」かもしれませんが、私は好きです。

さりげなく並行して描かれる鉄国と「この国」、猫と鼠との関係に
支配し、支配される社会の縮図やいじめの構図が浮かび上がり、
語り部となる猫トムの視線に、伊坂さんらしい風刺と批判が静かに滲み出て。。。

冒頭で、喋る猫トムが一番に主張するのが
一見吞気で太平楽に見える猫の欠伸が、実は不安や恐怖を感じて
なんとか落ち着こうとしている時であったりするのだ、ということだったり

為政者の首がすげ替えられた途端、あっけなく激変する社会の欺瞞を見抜くのが
たくさんの目が模様として帽子の鍔についている「複眼隊長」だったり

積み重ねられるエピソードの中で
自分の目線や常識に捉われて、何の気なしに下していた判断が
実は如何にあやふやなものであったか気づかされます。

猫らしい気儘さ、クールさを持ちながらも人間のために奔走し
鼠との約束を律儀に守ろうと生唾を飲んで耐えるトムがなんとも愛おしく
複眼隊長の「みんなで帰るか」の台詞は震えるほどかっこよく

帰りたい場所は自分で選択するもの。
そこに向かって一歩踏み出すのもまた自分なのだ、と深く胸に刻む
伊坂さん渾身の「夜の国」の寓話でした。

レビュー投稿日
2012年10月17日
読了日
2012年10月17日
本棚登録日
2012年10月17日
10
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