おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)

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本棚登録 : 1236
レビュー : 234
著者 :
まろんさん な行の作家   読み終わった 

相変わらず、音楽への熱情が
奔流となって押し寄せるような演奏描写♪
音符が飛び交う表紙にも、譜面をイメージした扉デザインにも
各章についた楽想用語にも、音楽への愛が溢れている。

デビュー作『さよならドビュッシー』は、大怪我を負いながら
ピアニストを目指す少女がヒロインだったこともあって
かなり閉ざされた世界の中で物語が展開していたけれど、
今回は音大の選抜学生オーケストラが舞台だったので
主人公のコンマス 晶を始め、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、
オーボエ、トランペットなど、さまざまな楽器奏者が登場して
担当楽器の特性と微妙にリンクした性格設定などが楽しい。

探偵役の岬先生も相変わらずのかっこよさ♪で、
ラフマニノフのピアノ協奏曲のシーンでは、
「え~、指揮だけ?岬先生なら余裕で弾き振りできるのに~!」
ともどかしくなってしまったりして。

音大生の中に歴然と存在する環境や才能による格差とか
国公立大学の4年分より多い、1年分の学費とか
物心つくかつかないかの頃から何万時間ものレッスンを積んでも
音大に進んだ中の数%しか演奏家として自立できない
音大生の就活の厳しい実態とか
音楽に関わる人には涙なしに読めないリアルさも健在です。

前作と同じく、伏線の張り方がとても几帳面なので
犯人も、トリックも、晶の素性もかなり早い段階でわかってしまうけれど、
台風から逃れた避難所で晶と岬先生が奏でた
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のように
全身全霊で奏でた音楽が、誰かの胸に届いたか、
それだけが音楽家の証である、という主張が素直に胸に響きます。

冒頭のチャリティーコンサートでの岬先生の演奏に
『さよならドビュッシー』のヒロインが聴衆の一人として耳を傾けていたり
彼女をコンクールで罵倒しまくった毒舌女王(?!)の
下諏訪美鈴のアルマジロ的かわいらしさが垣間見えたりして
前作を読んだ人は、2倍楽しめる作品になっています。

レビュー投稿日
2012年7月2日
読了日
2012年7月1日
本棚登録日
2012年7月2日
5
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『おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)』のレビューへのコメント

まろんさん (2012年7月3日)

うんうん、あの音楽への造詣の深さ、
もう、「大々的に音楽小説を書いて♪」
って思っちゃいますよね!

岬先生ほんとに素敵~♪
指揮振ってるシーンでちょっとよろけた時、
飛んで行って支えてあげたくなりました(*'-')フフ♪

円軌道の外さん (2012年7月4日)


中山さんの小説は
『さよならドビュッシー』が初めてだったけど、

ミステリーとしてというより
演奏シーンに何より心震えたんです。


音楽小説って難しくて、
実際に音楽に携わったものしか分からない感覚を
うまく言葉にできてる小説って
案外少ない気がするんです。

ストーリーはいいのに
演奏シーンになると
説明的になって
ライブ感やノリが
リアルに感じられなかったり…

結構冷めちゃうこともあるんやけど
中山さんの小説は
ホンマリアルを感じたんですよね♪


技術論に終始してなくて、
音楽は演奏者の
「意志のカタチ」だということを、
本当に何より
よく解っている作者なんだと思いました(>_<)


音楽の本質や
音楽を届ける側の
心の在り方に重きを置いた中山さんの意志ある言葉は
ホンマ自分自身にとっても
ツボなんで(笑)

この作品も次必ず
読んでみます!(*^o^*)
(毒舌女王の復活楽しみです笑)


まろんさん (2012年7月5日)

円軌道の外さん、そうなんです!

音楽の描写が、演奏のテクニックに終始することなく
演奏者がどのフレーズを美しいと思って弾いているのか
どんなイメージや想いを伝えようと思っているのか
そういう部分に重きを置いて描かれているのが
素敵ですよね!
『さよならドビュッシー』では憎らしいばかりだった毒舌女王、
この本では、相変わらず毒舌ではありますが
憎めない一面も見せてくれますよ♪

HNGSKさん (2012年8月30日)

コメントとフォロー、ありがとうございます。まろんさんが面白い、と書いている本に、何冊も興味がわいています。また読んでみたいと思います。

私は、トリックも主人公の素性も全然分からなかったです。「兄弟!?」みたいな感じでした・・・

まろんさん (2012年8月31日)

あやこさん、こちらこそありがとうございます♪

中山七里さんは、たぶんとても几帳面な作家さんなので
伏線部分を破綻がないよう、ものすごく一生懸命書き込んでくれていて
私の場合は、それがかえって「アヤシイ・・・」に繋がってるかもしれません。
でも、「兄弟?!」と驚いたあやこさんのほうが
きっと純粋で素敵な読み方をされたんだと思います!
なにはともあれ、岬先生の出てくる本を、中山さんには量産してほしいものです(笑)

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