世界から猫が消えたなら

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本棚登録 : 6016
レビュー : 1049
著者 :
まろんさん 猫♪   読み終わった 

この世界からひとつだけ、何かを消すかわりに
今にも消えそうな自分の命を、1日永らえさせられるとしたら。

自分で消すものを選べるのなら、オレオレ詐欺とか、学校の裏掲示板とか、戦争とか
喜び勇んでいろいろ考えついてしまいそうだけれど
消す対象は、悪魔が気まぐれ且つ意地悪に選ぶとなると、話はずいぶん違ってきて。。。

脳腫瘍で近いうちに死ぬとわかっても、「死ぬまでにしたい10のこと」の中に
「ガンダムに乗る」とか「ナウシカとデート」とか、能天気なことを書く、30歳の僕。

世界から、最後にどうしても通話したい相手もいない電話を消し、
親友や別れた彼女との大切な思い出だった映画を消し、
町の小さな時計屋という父の生業も顧みず、時計まで消しながらも
そばに来てみゃあと鳴き、抱きしめるとフーカフーカとあったかくて柔らかい、
猫のキャベツを消すことは、どうしてもできない。

電話のときも、映画のときも、時計のときも、人間の関係性とか物の存在意義とか
時間という概念が生み出した不自由さと引き換えの安心感とか
どこか他人事のように、消したものについて冷静に考えを巡らせていた僕が
母の形見でもあり、心のよりどころでもあったキャベツを消すとなると
うろたえ、迷い、仕舞い込んでいた記憶を甦らせ
「何かを奪って生きていくのは辛い」と気づく、その身勝手さが
人間らしくて、ほろりとします。

極彩色のアロハを着て、やたらとノリがよく、
きのこの山のあまりの美味しさにチョコレートを消す予定を取り下げる悪魔と
死を目前にしたとは思えないほど緊張感のない僕が繰り広げる会話は
こんなんでいいの?!と思うくらいあっけらかんと明るいけれど
「世界にあるほとんどのものは、あってもなくてもよいもの」なのか、
いつのまにか考えさせられてしまう物語。

拾ってくれたおかあさんの膝で、いっしょになって時代劇を見ていたせいで
悪魔からのサービス☆で、人間の言葉をしゃべれるようになっても
僕のことを「お代官様」と呼び、ござる言葉でおしゃべりする
猫のキャベツがとてつもなく可愛くて、思わず本に頬ずりしたくなります。

レビュー投稿日
2012年12月26日
読了日
2012年12月24日
本棚登録日
2012年12月26日
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