倫理学に答えはあるか―ポスト・ヒューマニズムの視点から―

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レビュー : 5
ujikenorioさん 倫理学   読み終わった 

嘘を付くことはなぜいないのか。安楽死はいいのか・わるいのか……倫理学の対応すべき事柄は身の回りの雑事から社会的な問題まではば広い。
アリストテレスは美徳から、カントは定言命法の立場から、そして功利主義は効用計算からその根拠を導き出そうと試みた。すっきりする説明もあれば、納得しがたい違和感も残るのがこれまで議論だったのではないだろうか。
著者は、先験的な人間の尊厳性を徹底的に否定することので、その根拠を本書で探求する。要するに道徳的根拠は、普遍化された一つの原理に求めることは不可能だろうという現実から出発する。そして、道徳の原理や道徳的判断の根拠を演繹的な理性の推論には置かず、「信念ネットワーク」の総体に著者は見出そうとする。
総合的な体系が全てを担保するのは夢想にすぎない。現実には、様々な原理や原則が相互に関連し、それが体系を構想する。
この信念ネットワークは先験的体系ではないから、そのつどアップデートが可能である。大胆に可謬主義を認めつつ、それを補完する議論は昨今の流行といえようが、著者の議論には「軽薄さ」を感じることが全く出ない。
イエスかノーかの根拠はどこにあるのか。その連鎖を辿ることで、脊髄反射を柔軟に退ける一冊。大学のゼミや演習での教材にも使いやすいと思う。

レビュー投稿日
2012年4月12日
読了日
-
本棚登録日
2012年4月12日
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