余命数カ月と宣告された男が、残りの時間とその命をどう社会奉仕的に有意義に使えるか考えた結果、悪人の殺害という結論に行きつく。
が、逮捕されたのは別の男、自白するも証拠がなく信じてもらえない。
かくして冤罪の男を救う為、有罪になる為にてんやわんやの試行錯誤が展開されます。
主人公のトッドハンター氏がおもしろくてユーモア溢れる1冊となっています。
悪人の殺害というとんでもない企みを持つ男ですが、「殺人」とはかけはなれた厳格で常識人で楽しい人格者のトッドハンター氏。
故に彼がどんなに事細かく自白しても、誰も取合わないで狂人扱い。彼が地団駄を踏んでいる様が滑稽です。
途中、裁判になってからは事は彼の手をはなれ政界を巻き込んでの大騒動に発展していきますが、500ページ超のほとんどがトッドハンター氏の心情風景です。
このくどいくらいの彼の心模様がどんな意味を持つのか、試行錯誤の結末がどうなるのか、最後まで気の抜けないミステリーです。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バークリーの作品をいくつか読んでいるせいか、肝心の殺人描写がない点をはじめ、至る所でこれはトッドハンター氏が犯人ではないな、と感じます。
感付いたところでつまらなくなるでもなく、わたしとしてはこのトッドハンター氏の人物像の魅力こそ一番楽しめました。
タイトルの通り有罪になる為に試行錯誤、それこそ証拠捏造までやってしまうわけですが、真相が分かると事は複雑でもっといろいろな試行錯誤がなされていたのだと気付きます。
ファローウェイ夫人との微妙な会話などはうまいです。パーマーがトッドハンターを鬱陶しがって噛み合わない様子なのにも合点がいきます。
アーネスト卿については最後にチタウィックが言及していますが、真相なんてどこへやら、裁判にノリノリな様子が楽しかったです。
トッドハンター氏の最後も彼らしくてよかったと思います。惜しむべきは、トッドハンター氏にはもっと日本旅行を楽しんでほしかった。
- 感想投稿日 : 2014年2月10日
- 読了日 : 2014年2月9日
- 本棚登録日 : 2014年2月3日
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