銀の猫

著者 :
  • 文藝春秋 (2017年1月25日発売)
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本棚登録 : 409
感想 : 62
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題名からは想像もつかない、まさかの「介護」小説だった。

『忠孝の考えが厳しい武家では、家を継いだ当主が自身で介抱に臨むのが最良。届を出せば城での勤めを休める』
武家がこうなら商家も当然同じ。
跡継ぎ息子が介護している最中、嫁は亭主に代わって商売を切り盛り。

えええ!!!
そーだったの、江戸時代!

家庭内で、女が、無償で(つまり嫁だったら相続権もなく)介護をするのが当たり前、と言う考えは戦後の日本からってことなのね。

戦前の日本では、さほど裕福でない家でも女中さんを雇っていて、家庭内の介護はこの子たちがになっていた、と言う話を聞いたことがある。

介護保険ができた頃、我が家の近辺(田舎です)では介護を他の人に委ねるのは家の恥、っていうか嫁がひどいヤツ、的な考えが横行し、制度を利用する人が少なかった。

その頃この小説があったなら、自分を責めずに済んだ嫁がどれだけいただろう。

内容にビックリだったが、人物の描き方が素晴らしく、さらに当時の介護指南まで書かれていて、内容の濃い一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年8月5日
読了日 : 2017年8月4日
本棚登録日 : 2017年8月5日

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