燃ゆる頬,聖家族 (新潮文庫 ほ 1-1)

著者 :
  • 新潮社 (1947年11月1日発売)
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本棚登録 : 241
感想 : 16
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古本屋で拾って積ん読していたものを読みました。堀辰雄は私の好きな太宰治と関係もある人物なので(太宰は芥川龍之介を尊敬していて、芥川に指南を受けたことのある堀に嫉妬していた)本書は堀辰雄の初期作品集です。

宮崎駿の映画『風立ちぬ』がきっかけとなってほったらかしていたものをよんだのですが、映画を見てから読んだせいもあってか、どうもイメージがジブリの絵にひっぱられてしまった部分もあります

しかし、『麦藁帽子』に出てくる少女の描写の繊細さなどは映画のイメージとつながる部分もあるかと思います。

堀辰雄の自伝『風立ちぬ』を読んでいないのでなんとも言い難いですが、筆致においては件の作品とのマッチングを感じ得ます。

堀辰雄はだいぶ昔に詩集を読んだことがあり、その印象で映画を観た時にも「堀越二郎を堀辰雄的に描きたかったのだろうか?」というのが感想だったのですが(その分これまでの作品よりジブリらしくないとも感じた)本書は小説短編集でしたので、その感想が後押しされたように感じました。

まぁ作った本人の宮崎駿がどういう想いで映画を作ったとかはインタビューだとかを読んでないので事実は知りませんが、堀辰雄の作品を読んだ私にはそう感じられたといったところです。

ジブリ映画の件はさておき、本書の作品群については「静謐」というのが感想です。私小説を読み慣れているせいもあるのですが、感情の起伏があまりない綺麗な作風なように思われました。場面場面が客観視で切り取られている印象でした。
ただ、その分、少しの嫌悪や登場人物の好意が際立っていて、感情表現の多い恋愛絡みの作品(『ルウべンスの偽画』『麦藁帽子』)は抒情詩的な印象を受けました。

感情移入するというよりも、場面場面が絵になって記憶に残るような作品が多いように思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 娯楽
感想投稿日 : 2013年10月31日
読了日 : 2013年10月31日
本棚登録日 : 2013年10月31日

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