♪~「おお~ドゥルシネーア姫、この悲嘆にくれる心の支配者よ!~おお姫よ、御身の愛を求めて、かくも苦悶する恋のしもべ……(延々続く)」
のっけからアブナイです(笑)。劇中の独白のようで、シェイクスピアも真っ青……。痩せこけた愛馬ロシナンテの背にまたがるドン・キホーテのお伴は、おなじみ驢馬に乗っかる農夫サンチョ・パンサ。2人の旅は可笑しな珍道中、その掛け合いは、口から生まれた漫才師よろしくまことに見事なものです♬
この物語は、騎士道の冒険とはいっても、血生臭い場面はほぼありません。ドン・キホーテとサンチョ・パンサ主従を中心に、沢山の登場人物の饒舌なおしゃべりで占められています。その語りは雄弁で延々と続き、セルバンテスの創造とユーモアは、こんこんと湧き出す泉のよう。
また、その小説手法は巧みの技。モーロ人のシデ・ハメーテという人物(第1作者)が書いたアラビア語原典を、セルバンテスが第2作者として翻訳・編纂するという、大胆な又聞きスタイルになっています。全巻とおしていろんな仕掛けがほどこされた、壮大なメタフィクションになっています。
そのため、第2作者のセルバンテス(という設定)は、わりと叙事的な筆致で書いているのですが、ひょこっと、第1作者(シデ・ハメーテ)の悲劇のようなセリフが飛び込んできたり、第2作者のセルバンテスがMCよろしく読者に語りかけたり鼓舞したり……平板になりがちな長編に奥行きと遊びの力がみなぎります。
前篇のドン・キホーテの目に映るものは、まさに妄想の世界。田舎の旅籠は城砦に映り、羊の群れは、血沸き肉躍る騎士団の行軍、はたまた農夫が頭に乗せている「金たらい」は、燦然と輝くマンブリーノの兜、極めつきは、ドン・キホーテの前に猛然と立ちはだかる邪悪な巨人! 愛馬ロシナンテとともに突撃したドン・キホーテは、巨人に思いきり槍を突き立てるのですが、あぁ~惨憺たる有様、憐れドン・キホーテ、まこと災難ロシナンテ……。
『「やれやれ、なんてこった!」
とサンチョ・パンサが言った。
「ご自分のなさることにようく気をつけないさまし、あれはただの風車で巨人なんかじゃない、とおいらが旦那様に言わなかっただかね。頭のなかを風車がガラガラ回っているような人間でもねえかぎり、まちがいようのねえことだによ」』
ということで、レビューは後半へ続きます。
- 感想投稿日 : 2017年1月29日
- 本棚登録日 : 2017年1月27日
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