盗まれた手紙 (バベルの図書館 11)

  • 国書刊行会
3.90
  • (2)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 33
感想 : 6
4

ボルヘスの「バベルの図書館」シリーズはどの作品をとってみても一筋縄ではいかないものばかりで驚嘆します。ということで久しぶりにエドガー・アラン・ポーを手にしてみました。いやぁ~あまりの面白さに唸ってしまいました。

序文(ボルヘス)
「盗まれた手紙」
「壜のなかの手記」
「ヴァルドマル氏の病症の真相」
「群集の人」
「落とし穴と振子」

どれも濃厚で力作です。「壜のなかの手記」は、夢なのかうつつなのかわからない、とてもリアルな描写で妖しい……メルヴィルの『幽霊船』のような雰囲気が漂っています。
「群集の人」は、都会の中の孤独と狂気が取り巻いています。私の好きなポール・オースター『ガラスの街』のような興味深い作品。
「落とし穴と振子」は、ずばり恐怖! 狭い密室の中で粛々と処刑が進行していきます。しだいに追い詰められていく主人公の描写は壮絶で、カフカ『流刑地にて』に匹敵するホラーぶり……ここまでくると怖いもの見たさで絶対に目が離せないおもしろさ。

いつも不思議に思うのは、この頃のアメリカの作品、ポー(1809~1849)にしても、ホーソーン(1804~1864)にしてもメルヴィル(1819~1891)にしても、はたまたロビンソン・クルーソーのような森の生活を満喫しているソロー(1817~1862)作品までもが、なんとも形容しがたい気味の悪さや独特の暗さと雰囲気を湛えています。それは深い底なしの憂いのような、禁欲的で鬱屈したようなある種の息苦しさやめまいのようなもので、作品を読んでいる頭の中はいつも鈍色の厚いもやがかかったようになります。でもだからといって面白くないというわけではない、それどころか独特の魅力をそなえた素晴らしい作品群に目が離せなくなってしまうわけです。

ボルヘスは世界の文学作家から選りすぐった30冊で「バベルの図書館」を創造しています。
そこには本書のE・A・ポー『盗まれた手紙』のほかにもハーマン・メルヴィル『代書人バートルビー』、ナサニエル・ホーソーン『人面の大岩』もあるようで、その選抜もひどく面妖で興味深いものばかりです。そしてなんといってもポーの魅力を再発見させてくれた、ボルヘスの不思議な図書館に感激です!

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年6月5日
本棚登録日 : 2017年5月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする