家守綺譚 (新潮文庫)

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本棚登録 : 6272
レビュー : 926
著者 :
yocoさん 短編集・詩集   読み終わった 

100年とちょっと前、明治の頃、琵琶湖のほとりにある和風建築の屋敷に暮らす物書き・綿貫征四郎が綴る自然豊かな、摩訶不思議な、物語。

ずっと読みたいと思って気になっていた1冊ですが、鳥肌が立つのとも違う、肩甲骨の間がくすぐったくなるような、切ないくらい懐かしくなるような、夢を見ているような、不思議な読み心地でした。これは桃源郷の物語だと言われても頷けてしまうような、描かれているのはなんとも不思議な世界です。なにせ、まだ河童や鬼の存在が信じられていた頃の物語で、自然の「気」を色濃く感じます。

懐かしさを感じるのはきっと、小さい頃草木にまみれて遊んだ時と同じ自然との距離感を至るところから感じられるからかもしれないですね。小さなコミュニティで不便なことが多くても、とても豊かな世界が広がっているのがわかります。
作中の表現も普段見慣れないような美しい日本語が並んでいて、新鮮かつわくわくします。ちょうどもう少し先の季節になりますが、「新緑だ新緑だ、と、毎日贅を凝らした緑の饗宴で目の保養をしているうち、いつしか雨の季節になった」なんて表現もすごくきれい。

たまにひょいと登場する高堂と綿貫の掛け合いも好きです。親しい間柄だからこそ取り交わせる遠慮のない言葉かけが心地よくて。高堂の弱くも孤高で、誰よりも誇り高い人柄も好きだし、高堂側からの物語も読んでみたくなります。

「西の魔女が死んだ」でも感じたけれど、特定の宗教に対してではないけど自然や祖先に対する信仰心のようなものを強く感じ、そういった部分に感銘を受けたりもしました。一人旅のおともにもいい本だと思います。

レビュー投稿日
2015年5月6日
読了日
2015年5月6日
本棚登録日
2015年5月6日
15
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