わたしの献立日記 (中公文庫 さ 61-1)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年9月21日発売)
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本棚登録 : 1009
感想 : 61
5

愛してやまない1冊です。
残業の帰り道、この1冊にどれ程心を癒されたことか。
献立日記の名の通り、本書の大半は著者が26年間綴り続けた献立が載っています。26年ですよ。
年数だけでなく、その中身も圧巻です。主食から副菜、汁物まで、忙しい女優業でありながらこんなにも丁寧にきちんと毎日を送っていた人がいたなんて、とただ驚くばかり。

日々の暮らしを丁寧に扱う心意気が、ページを開く度にこちらにまで感じられて、それが忙しい日が続いてもなお「私も毎日を丁寧に過ごそう」と思い起こさせてくれたのです。

さて、そもそも私が本書を手に取るきっかけをくれたのは、平松洋子さん。
いわく、「献立日記は、沢村貞子にとって、自分の人生を全うするための心棒であった。それは、脇役女優として懸命に働き、たいせつにした夫婦の暮らしを守り通すための盾であったかもしれない。だからこそ、恬淡と綴られた献立日記はぴんと背筋を伸ばした気の張りを湛えている。それは、沢村貞子の生きかたそのものである」
書かれているあとがきも、素敵です。

本書に綴られているエッセイにはところどころ毒も混ざっていて、著者が聖人ではないことに安心します。
読んでいて感じるのは、世間の目よりも何よりも、自分がよしとしたものを、自分の軸できちんと判断して最後まで大切にする姿勢です。
献立を眺めるだけでもそれが感じられる。ため息がでそうなくらい、その生き様が凛々しくて。
同時に季節に即した献立リストは、何を作るか迷った時のヒントになる。ずっと大事にしようと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2016年9月10日
読了日 : 2016年9月10日
本棚登録日 : 2016年9月10日

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