都内で謎の感染症が発生し、死亡者が続出。
厚労省や感染症研究所が登場し、対応に追われる。
原因不明のパンデミック。絶滅への扉は開かれた――
コロナ自粛にも疲れてきて、そうはいっても密で遊びまわるわけにもいかない。人類の生き残りをかける程の感染症をフィクションで読んで、もう少し自制心を働かせよう。
そんな意図で手にした8月発行の本書。実は2年前に発行されたものに副題をつけた形で再発行されたものでした。
息つく暇もなく、様々なことが起こる東京。
死体の描写が何とも気味悪く、実は読み進めるにしたがってぞわぞわする場面はそれだけではないと思い知らされた。
一体何が起こっているのか、時間のない中で情報を集め明るみになる事実に驚くばかりで、同時に組織の中で非常時に対応することの難しさを改めて痛感しました。ただでさえ大変な時に、嫌な上司や同僚がいると心が疲弊しますね。
非常時に、どこまで国民に情報開示をしていくか、という難しさも。情報開示は大事なことだと思いますが、一度流れた情報はもう止められず、不安な情報しかなければパニックを引き起こす。かといって、閉鎖的に議論してても危機感は伝わらず不信感が募るばかりだし、事実関係の整理すら追いつかない状況では誰が責任をもってどこまで伝えるのか、白黒はっきりしないものへの対応に日頃からどんな備えができるのか、なんて本筋から離れたことも考えさせられました。
今までに5回もあった大量絶滅。人間もいつかきっと滅びる日がくるのでしょう。地殻変動か、人間自身によるものか。フィクションだけど、現実と地続きで、読み応えのある一冊でした。
この時期に再刊行した判断は素晴らしいですね。
- 感想投稿日 : 2020年8月10日
- 読了日 : 2020年8月10日
- 本棚登録日 : 2020年8月10日
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