水面に投げられた石のような本でした。
話題作として何度も耳に入りながら、なかなか手を伸ばせなかった本です。読み終わるのはあっという間。
それでいながら、読了後はなかなか鳥肌が消えませんでした。
「聖職者」「殉職者」「慈愛者」などのタイトルのもと、犯人やその母親、級友がたんたんと語る、あるいは綴る物語でした。
真実はひとつでも、その見え方、捉え方は人それぞれで、むしろ見えない部分こそが著者の書きたかったものなんじゃないかと思ったほど。
和紙を重ねるみたいに、話を進めるごとに色濃く事件の全貌が見えてきます。
読んでいて、きっと先には救いなんてないんだろう。
そう思うのに、読み進めるのを止めることができず。もしかすると、見方によっては救いがあるのかもしれないけれど。
いたるところにトゲが散りばめられていて、読んでいてチクリと痛い。
どなたかがレビューで "弱っている時に読むものじゃない" と書かれていたけれど、本当にそのとおりですね。
湊さんの次作は、ぜひ弱っていないときに読んでみよう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の小説
- 感想投稿日 : 2013年4月2日
- 読了日 : 2013年4月2日
- 本棚登録日 : 2013年4月2日
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