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無垢の博物館 上 (ハヤカワepi文庫)
- オルハン・パムク
- 早川書房 / 2022年8月3日発売
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イスタンブールでこの本にまつわる品々を展示する同名の博物館を訪れたあとに(こじんまりとした雰囲気でオーディオガイドが聞き応えあります)、図書館で借りて読み始めたのだが… 主人公にまったく感情移入できない。上層階級出身の婚約者と貧乏で年若い女性と二股生活を継続したかったケマル。自己チュウで自分のことしか考えてない。家父長制の影響力が強く保守的な社会は少し日本を思い出させる(明治のあたり?)。トルコの社会や政治背景などは興味深い。下巻読むかどうか悩む。
2024年10月23日
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やさしい猫 (単行本)
- 中島京子
- 中央公論新社 / 2021年8月19日発売
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読み終えた後、自然に涙がこぼれてきた。なぜ家族と一緒にいたいだけなのに、これほどまでの困難を乗り越えなければならないのだろう。ハッピーエンドで良かったけれど、現実にはどれだけの家族が引き裂かれていることか。また、戦後米国の占領下にあった奄美からの「密航」のエピソードも、学校では習わない近現代史で興味深かった。この小説が読売新聞に連載されていたのも意外。テレビドラマ化希望。お話としても面白いし、入管行政の悪行は広く知られるべき。
2022年11月20日
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総務部長はトランスジェンダー 父として、女として
- 岡部鈴
- 文藝春秋 / 2018年6月22日発売
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図書館で見かけて面白そう!と軽い気持ちで借りてみたが、読後は当初の予想と違って少し複雑な感想をもった。単純に、生きたいように生きられて素敵!だけではないような。トランス当事者はそれぞれ異なる事情から他人にはおいそれとはわからない困難を抱えて生きているように思う(著者含め)。著者は言う「今後、もし自分について説明するときは、こう答えよう。『私は、心身ともに健康なトランスジェンダー女性です』」。これは「不健康な」トランスもいる、または多いということ?自分の信念を貫く姿勢は素晴らしい。しかしところどころでご自分が持つ特権性に少し無自覚なのかなという印象を受けた。家庭のことは家庭でしかわからないかもなのであまりとやかく言えないけれど。
2022年11月20日
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韓国文学の中心にあるもの
- 斎藤真理子
- イースト・プレス / 2022年7月12日発売
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『82年生まれキム・ジヨン』から韓国の小説に興味を持ち始めた初心者だが、この本を読んで、いかに自分がお隣りの半島の近現代史について無知無関心だったかを痛感した。例えば、戦後日本の敗戦と帝国解体により(それまで強制的に押しつけられていた)日本国籍を突然失った朝鮮出身者が、朝鮮戦争勃発によって帰国断念を余儀なくされたことは知っていた。しかし、そこで自分がイメージしていた彼の地での「戦争」の姿は、まさに日本における第二次世界大戦の様相で(基本、敵の姿が見えない空襲など)、沖縄戦のような敵味方が入り乱れる地上戦であったという基礎的認識が欠けていた。さらにイデオロギー対立を軸として疑心暗鬼をかきたてられた戦争であったということも。帰れなかったのももっともだと目が開かれた思いがした。さらに済州島から逃れてきた人々が在日コリアンの源流の一部、という事実も覚えておきたい。今日ならば難民条約に該当する難民として保護されるべき人々であったのだから。
2022年10月20日
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動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)
- ジョージ・オーウェル
- 早川書房 / 2017年1月7日発売
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現在進行形で起きている日本の状況にも重なるストーリー。格差拡大、「国葬」問題、底なし五輪汚職、一向に是正されない男女不平等、政治家による言葉の言い換え。一部の「上級国民」だけが得をする政治、コケにされてもすぐ忘れてしまう大衆。「すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりもっと平等である」
訳者あとがきにある執筆当時の政治的思想的背景が興味深く(ソ連の共産主義や計画経済が西側左翼インテリによってずっと好意的に捉えられており、批判はためらわれていた等)、作品を理解するうえで役にたった。作品の評価は時代背景によって変わるのだなという好例。
2022年9月25日
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男も女もみんなフェミニストでなきゃ
- チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
- 河出書房新社 / 2017年4月18日発売
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これ、日本の教科書に入れるか課題図書にすべきでは。
恐ろしい。一気読みしてしまった。少し『侍女の物語』を想起する内容。ある種の道徳的「正義」が国家によって推し進められると狂気になってしまうという。しかし、今の権威主義的な政治を考えると、まったく絵空事とも言えないところが余計に怖い。現実として侮辱罪も厳罰化されたし。
政治に関心が薄い、演劇や映像とか表現に関わっている人々が最も危ないかもしれないですよ。。。選挙に行きましょう。
2022年6月17日
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不法移民はいつ〈不法〉でなくなるのか 滞在時間から滞在権へ
- ジョセフ・カレンズ
- 白水社 / 2017年9月24日発売
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技能実習生制度を見る限り当てはまらない日本。あ、そもそもリベラル・デモクラシーかどうかも怪しくなってきたか。
2022年5月29日
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ちょっとフレンチなおうち仕事 (正しく暮らすシリーズ)
- タサン志麻
- ワニブックス / 2020年5月22日発売
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ワニブックスだけど(失礼!)、古いものを直しながら大事に使い、自分らしく暮らすタサン家の様子がうかがえる本で、思いのほかよい内容だった。厳選された調理用品の紹介、DIYでのリフォームのコツ、子育てについての考え方やレシピも載っていて、飽きない構成なのもサラッと読めてほどよい。
2022年5月5日
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パリのすてきなおじさん
- 金井真紀
- 柏書房 / 2017年10月26日発売
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「世界はいろんな色をしている」
世界のあちこちからやってきた「おじさん」の人生模様。個人的に一番心に残ったのは「隠れた子ども」だった男性。ショア記念館、存在すら知らなかった。恥ずかしい。次にパリに行った時は是非訪問したい。
それから大統領選挙の候補者集会巡りレポも支援者の違いがよくわかって面白い。
2021年10月14日
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ダーリンは外国人 まるっとベルリン3年め トニー&さおり一家の海外生活ルポ
- 小栗左多里
- KADOKAWA / 2016年1月22日発売
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ワンダーヤーレやリペアカフェのような日本では見られない伝統や新しい試みが面白かった。全体的に自由で互いに寛容な街の雰囲気が伝わってきて明るい気持ちになれます。さらっと読めるけど、日本の閉塞的な社会と比べたりすると、意外に深い内容。
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コピペと言われないレポートの書き方教室 3つのステップ
- 山口裕之
- 新曜社 / 2013年7月26日発売
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何気なく図書館で手に取ったのがきっかけだったが、今まで読んだレポートの書き方についての参考書のなかで一番役にたつ内容だった。それまで読んだものはインターネット時代に促していない古典的「書き方本」だったのに対し、この本はどういったウェブサイトからどのように引用したらよいのか(そしてそれはなぜなのかという理由)、電子メールでレポート提出する際の注意点などがわかりやすく解説されている。さらに、このような技術的な事柄だけでなく、大学でレポートが課される意義について深い考察がされている。マニュアル以上の本。
2021年4月20日
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難民 (思考のフロンティア 第II期)
- 市野川容孝
- 岩波書店 / 2007年6月28日発売
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「難民」という言葉を改めて問い直した第II部が特に興味深かった。英語のrefugeeと仏語réfugiéは日本語の「難民」とどのように意味が違うのか。著者は日本語の「難民」はrefugeeやréfugiéとは違い、困難から「逃れる」「避ける」という空間移動のニュアンスが不在で、困難や災難に「遭遇する」「見舞われる」ほうに焦点があてられていると分析する。(最近では「ランチ難民」など、モノやサービスにアクセスできない人を「難民」と形容する使い方をよく見かけるが、このような言語理解の違いが日本のなかなか難民を受け入れない「難民鎖国」にもつながっているのではないかと思わされた。
戦後、国が荒廃したままなのに引き揚げ者などにより人口は増加するなか、その対策として(つまり女性の権利向上としてではなく)中絶が容認されたという文脈において、displacementと優生保護法がリンクしているという点も新たに知ったことだった。現在は少子高齢化が大きな社会問題となっているが、少し前まではいかに人口を減らすかが懸案だったのも軽い驚き。時代劇はもういいので、このような近現代史をもっと教育メディアで取り上げてほしい。
2021年4月18日
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戦う姫、働く少女 (POSSE叢書 003)
- 河野真太郎
- 堀之内出版 / 2017年7月20日発売
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ポップカルチャー的な軽いタイトルとは裏腹なバリバリの学術書。アニメファンではない私のような読者は、最後まで読み進める気力を保ち続けるのが難しいかもしれない。それでも日本の「女性活躍」政策にみられるネオリベ・フェミニズムの問題点がより深く理解できておもしろかった。また自分はなぜフェイスブックの利用を止めてしまったのか ー 「絶え間ないアイデンティティ管理維持という労働を通して自分を企業家化する」ことに疲弊してしまった ー が言語化されていて腑に落ちた。
コロナ禍でより深く大きく広がった社会の痛みを経験した私たちは、「自助」や「自己責任」を基調とするコロナ前の(現在の)新自由主義経済に無邪気には戻れない。エッセンシャルワーカー(その多くが非正規雇用、女性、低賃金)がいかに社会にとって大切な存在なのかが広く認知された今、連帯の必要性もより切実に理解されたのではないだろうか(それを具体的な社会的変革につなげていけるかどうかは今の時点ではまだ未知数だとしても)。
2021年4月9日
さらっと読める青春小説だが、内容は深い。軽快な筆致が余計に心にこたえる。この国で生まれ育った子どもたち(と親)が、国籍が違うというだけで国からも社会からも差別を受ける日常がさらりと書かれている。それから在日朝鮮/韓国コミュニティ内での同調圧力も(日本の高校を受験するのを歓迎しない民族学校とか)。こちらのほうはあまり知らなかったので興味深かった。自分がもし日本社会と朝鮮韓国コミュニティ双方から互いを意識した圧力や差別意識にさらされる毎日を送らなくてはならなかったらと、考えただけでしんどくなる。
李くんが本名で嫌な思いをすることなく暮らせる国に変えていきたい。
最後にタイトルの意味なんだけど、これはやはり英語で「行く」を意味するGoなのかな?碁ではないですよね…
2021年3月10日
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これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン
- 太田啓子
- 大月書店 / 2020年8月26日発売
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この本で紹介されていた上智大学の学部生向け授業、見てみたら面白い(「立場の心理学:マジョリティの特権を考える」上智のオープンコースウェアで無料公開)。マジョリティの視点から差別を考える講義。多数派に属していると見えないものがあったり、少数派のことを知らないままでも生きていけるという特権に気づかされる。
このように興味深い参考文献やサイトが記載されていて、もっと深く知りたい人に役立つと思う。
2021年2月17日
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トレブリンカ叛乱 死の収容所で起こったこと 1942-43
- サムエル・ヴィレンベルク
- みすず書房 / 2015年7月24日発売
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「騎士団長殺し」からこの本にたどりついた。「騎士団長殺し」で引用されている箇所はみすず書房の訳とは異なっている。村上春樹自身が訳したのだろうか?
みなが「事実上、屍体」で「「生」が少し延ばされているだけ」の世界では、音楽(囚人のヴァイオリン・トリオが奏でる戦前のポピュラー音楽)すら凶器になってしまうことが印象的だった(「過ぎ去りし日々を思い出させ、意気消沈させ、心に深い傷を残した。」)。著者はイスラエル移住後、芸術家(彫刻家)になったようである。この本に登場する人々を題材にした彼の作品もネットで見られる。
次はネトフリの「隣人は悪魔」(アメリカで逮捕されイスラエルで裁判にかけられた、トレブリンカ収容所元看守についてのドキュメンタリーシリーズ)をみようと思う。この「イワン雷帝」はじめ、ウクライナ監視兵がいかに残虐非道だったかについてはたびたび言及がある。また、本にある簡単な収容所内部の地図だけだと囚人の仕事内容や位置関係(「上の収容所」とか「下の収容所」のような記述)がいまいちわかりにくかったのだけれど、映像でみればその辺がもっと理解できるかなと期待。
2021年2月13日
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メイドの手帖 最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語
- ステファニー・ランド
- 双葉社 / 2020年7月16日発売
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過酷なシングルマザーの日々が経験者の視点から描かれる。頼れる家族もいないなか、清掃の仕事をかけもちし、小さい子どもの面倒を見ながら福祉や助成金の申請に駆けずりまわり合間には大学の課題をこなす。いつも頭の中はどうやってやり繰りするかでいっぱいで息つくひまもない。そんな孤独と絶望のなかにもささやかな幸せを見つけたり誰かとつながろうと試みたり。私からみたらスーパーウーマン。
めいっぱい努力して働いているのに貧困から抜け出せないという今の経済システムと同じくらいやりきれないのは、いかに貧しさが人の尊厳を傷つけるかという社会的な側面(福祉に頼るのは「怠け者」の証拠、「社会のお荷物」という周囲の冷ややかな視線に常にさらされるプレッシャー)。日本と無関係な話ではないと感じた。著者が公的支援の利用をためらわないという点においては(一時期には7種類もの制度を同時に活用)、日本よりまだましかもしれない。
まず派遣先では住宅に挨拶するってところがちょっとコンマリ風。派遣される家庭についての著者の鋭い観察眼や人間的な交流なども階層化したアメリカ社会が垣間みえて興味深い。
2021年1月16日
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おらおらでひとりいぐも
- 若竹千佐子
- 河出書房新社 / 2017年11月17日発売
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ドラマチックなことは起きない。年配の女性の毎日と回想が淡々と描かれるだけ。しかし「老いる」とは具体的にどういうことなのかを突きつけられる感じで読後感は結構ヘビー。ラストに少しだけ明るさがあった。コンテクストは全然違うけど、人生の最終章に向かう主人公が空想の家族と日々会話することで気力を保つという点が、今公開中の映画ミッドナイト・スカイに通ずるような気がした。
2021年1月3日
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アメリカ大統領選 (岩波新書 新赤版 1850)
- 久保文明
- 岩波書店 / 2020年10月22日発売
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共著の岩波新書は少ないそうだ。ちなみに著者2人は師弟関係にあるらしい(別の出版物記念セミナーで岩波の編集者が話していた)。
p.196、米国独立で黒人や先住民は無視され白人だけが権利を勝ち取ったとあるが、白人でも女性は男性と対等な権利を与えられなかったことを付け加えたい。
米国に限らずトランプ退場後もトランピズムは続くだろうが、人種差別や社会的環境的不正義に声を上げて連帯し、この本の終章で描かれた悲観的な未来を変えることができるのも私たち。
2020年12月16日
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白い病 (岩波文庫 赤774-3)
- カレル・チャペック
- 岩波書店 / 2020年9月17日発売
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授業の課題で出された作品(Webで無料公開中に読んだ)。現在の状況をいやおうなしに想起させる設定に驚く。原作ではパンデミックが世の中に引き起こす不安を利用して自分の利益を追求しようとする輩(軍事産業、政治指導者、医者)が登場するが、現代日本も似たようなものかもしれない(政治家、オリンピック関連団体…)。
映画化されており、youtubeで無料で観れる(チェコ映画)。ほぼ原作に忠実な内容。https://m.youtube.com/watch?v=HJMUIBEzYnI&t=1075sl
2020年12月6日
独特のリズムを持つ文体。巻子と緑子の親子は大阪に戻ったその後どう暮らしているのだろう。気になる。
2020年12月3日
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兄弟―刑務所の内と外で
- 千本健一郎
- 晶文社 / -
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ディディエ・エリボンの『ランスへの帰還』つながりで手にとった本。スラムから抜け出し大学教授となり作家として高い評価を受ける兄と強盗殺人の罪で終身刑を受けた弟。著者である兄ジョン・ワイドマンは、なぜ2人はこうも違う人生を歩むことになってしまったのかを探るため、刑務所にいる弟ロビーと対話を重ねる。弟が事件を起こしたのが1975年。この本で詳しく描かれている当時の構造的な人種差別(警官からの取り扱い、裁判の過程や刑務所の待遇など)が今のBLMにつながる状況とあまり変わっていないことに暗澹たる気持ちになる。
2020年12月16日
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侍女の物語 (ハヤカワepi文庫 ア 1-1)
- マーガレット・アトウッド
- 早川書房 / 2001年10月24日発売
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「侍女の物語」テレビシリーズ(HBO)を見て『誓願』を読んだあと『侍女の物語』にたどり着いた。テレビ版は色彩的にビジュアルが美しいのだが同時にゾッとさせられる感じで、さまざまな暴力の描写も見続けるのが辛くなるほどリアルだった(著者自身が監修として参加したということだ)。
テレビ版との違いがいくつか。主人公はテレビ版のほうが原作よりも反骨精神の持ち主という印象を受けた。年齢が若めに設定された司令官夫妻との確執も、テレビ版はより丹念に描いている。侍女仲間の最期も少し違っていた。
来年公開予定のシーズン4が楽しみ。
2020年12月6日