失はれる物語 (角川文庫)

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本棚登録 : 12800
レビュー : 1282
著者 :
urarinchoさん  未設定  読み終わった 

1話から涙腺崩壊。電車で涙拭いながら読んでました。ずるいですよね、泣かせる書き方だもの。何となくしっくりこないところもありますが、涙を誘わずにはいられない、死や痛みの物語。各話読み終えるごとに切なさや温かさを感じて、ぐっと唇をかみしめ余韻に浸る感じだった。まあ、穿った見方をすれば中二病っぽい。空想というか妄想のような世界で、孤独と人との関わりを行ったり来たり揺らいでいる不安定なお話。

初読みの作家さん。別の作品を読んでみようかどうかは、微妙な感じですけどね、いろいろ見ると白乙一、黒乙一があるようで。白乙一が初めてで良かった。

短編集ですが、一番のお気に入りは「しあわせは子猫のかたち」。幽霊と言っていいのか殺されてしまった前住人雪村サキとの奇妙な生活。そして、その奇妙な生活を失う喪失感と雪村サキの最後の手紙。辛さと優しさが入り交ざった、でもきっと何とかなる、大丈夫、と思うような読後感に涙ボロボロ。

以下、それぞれの簡単な感想というかメモ。ネタバレです。
「Calling You」しょっぱなにやられた。こんな設定ないだろ、と思いながらもドツボにはまってしまい涙腺崩壊。ベタな展開ですけどね。未来は変わらない、変えられないというちょっとタイムトラベル・タイムループ的な要素もありつつ。脳内の想像の電話でしか話したことの無い女性のために命を投げ捨てるその想い。未来の自分が、なりたい、憧れの存在だったというのは、ちょっと出来すぎか?「失はれる物語」植物人間状態になると恐いですよね。意識と生死。愛する人には幸せになってほしいし、縛られて欲しくないけど・・・愛するがゆえにわざと死んだフリというか動かないようにして。そして、その時の妻の反応が、ツライ・・・。果たして何年暗闇で過ごしたのか、考えると恐怖ですが。「傷」救われたような救われなかったような。シホにはちゃんと戻ってきてほしかったんですけどね。「手を握る泥棒の物語」本作の中では一番明るい?そんな簡単に泥棒しようなんて思うものか?なんて思うけど。最後はニヤッとしてしまう。「しあわせは子猫のかたち」個人的に本作では一番。幽霊のような雪村サキとの共同生活、そして最後の手紙。最後の手紙が温かい読後感をもたらしてくれる。村井の友人殺害、そして雪村殺害については、必要だったのだろうけど、あくまでオマケの話かなと思ってます。「ボクの賢いパンツくん」なかなかシュール「さらばだ」のセリフに、〆はトランクス派に成長したというところが面白く。この〆は男子にしかわかるまい。「マリアの指」やられた。まさかどんでん返しをかましてくると思っていなかった。絵面的にはなかなかホラーな感じですが、根底には愛があるというか、けっこう好きな作品です。最後に「失恋・・・?」で締められる。ガラスのような作品とでも言うのかな。鈴木恭介は異質な状況にクラクラしていたと思っていたら、ホルマリンという理由が準備されていて、妙に納得したり。なのに、爪の裏の糸くずの伏線回収は???あと、人を愛さないと思われた鳴海マリアが勉三さんもとい芳和さんを好きになった理由ってなんだったですかね?ちょいちょい謎なところが残ったままですね。「ウソカノ」嘘から出た真でも言おうか?こういう立ち直り方というか自立というか、そんなのも有りかな。がんばれよ、と応援したくなる読後感。安藤夏、アンドーナツ?想像でも現実でも、誰かがそばにいてくれればなんとかやっているいけるよ、なんて思わせてくれる。でも、彼女設定ノートがいかにも中二病っぽく(笑)

基本的に短編集は好きではないのですが、こんなにいろんなお話がそこそこの分量で詰まっていて、楽しめたというとちょっと違う気もしますが、良い本でした。お奨めしたくなる本です。

強いて気になったと言えば、犯罪者が逃げちゃっているということか。村井もシホも鈴木響も逃げちゃっているのが、なんとなくスッキリしないかな。まあ、捕まりました、みたいなことを書かれても興醒めかもしれないけど、悪を許しているような気がして。

レビュー投稿日
2013年12月19日
読了日
2013年12月17日
本棚登録日
2013年12月19日
3
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