最初に読んだのは確か、小学校高学年か、中学一年かの頃。それからウン十年の時を経て再読。森絵都さんを知ったきっかけの本だったような気がする。(その後、森絵都さんの「カラフル」、「風に舞いあがるビニールシート」、「みかづき」は大好きな作品となった。)
本書にはなんとも不思議な思い入れがある。「読んだことのある本」ということですごく心に残っているのだけれど、内容はあまり覚えていない。父に連れて行ってもらった地元の図書館で借りたのだけれど、この本を手にして見上げた窓から見た外が雨だった記憶があるようなないような。タイトルをよく覚えているのに、あまり好きになれなかったような。
そしてすごく長い時を経て、なぜかまた読んでみようと思って、また図書館で借りてみた。今度は今私が住む町の図書館で。
再読してみてわかった。あの頃「この本好き」と思えなかった理由が。主人公のさゆきが私にないものを持ちすぎていたから。ある種の嫉妬。近くに住む仲の良いいとこも、歌を、しかもロックを夢にするようなカッコイイいとこも、テツのような優しい幼馴染も、まぶしい街、新宿も私のまわりにはなかった。自分の心に素直で、思ったとおりに行動できて、ガッと燃えて、ワッと泣けて、先生に「個性」を褒められるようなさゆきがうらやましくて、「ふん、所詮、小説」と斜に構えるようなことしかできなかった私は、さゆきのお姉ちゃんと同じタイプだった。固定観念ゴリゴリ、偏見ゴリゴリ、自分の周りの小さな世界しか見えていなかった私には、この本の良さがわからなかったんだなと再読して思った。今回は素直に好きになれた。とても面白かった。児童文学ということを差し置いても、文章のリズムが良く、一瞬にして物語に引き込まれ、一気に読んでしまった。心地よい読後だった。
脇役だけれど、個人的に大西先生が印象に残った。大西先生の良さを見抜くさゆきはやっぱり魅力的な主人公だった。余談だけれど、最近気づいたことに、少ししか登場しなくても重要な役割を果たす「学校の先生」が気になる小説が多い。私、学校の先生になりたかったのかな(笑)
- 感想投稿日 : 2022年4月22日
- 読了日 : 2022年4月22日
- 本棚登録日 : 2022年4月22日
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