異世界に召喚されてしまった普通の中学生(高校生)が活躍する好きなタイプのお話。
この手の異世界召喚ものってのは、古くは「特別な力に目覚めた主人公が活躍する」ものが多かったが、近年では「特別な力を持たない主人公が現代知識を武器に活躍する」といったものも増えてきた。
この百練の王と~は後者のタイプ。
異世界の文明レベルは青銅器時代程度で、そこは戦乱の世であり、桁外れに強い少女武将が存在し、主人公はそこで一国の宗主としてかしずかれている、という設定は、まんま恋姫無双だなぁと思う。
主人公は元の世界には帰れないが、都合の良いことにスマートフォンはなぜか現代のネットにつなぐ事が出来、そこから現代知識をあさり放題、使い放題。
一度は読んでみたい、ないなら自分で書いてみたいと思っていたネタなので、手軽にそのネタが読めるのは嬉しい。
異世界で現代知識を武器に戦うというと、先にも述べたオリジナル版の恋姫無双や、鳥居羊の巨竜城塞のアイノ、榎宮祐のノーゲーム・ノーライフなんかがすぐに思い浮かぶが、まあよくある話である。
農地の回復にクローバーを使う、なんてのはノーゲーム・ノーライフでもまったく同じネタを使っていた。
ありがちでそろそろ手垢まみれの内容ではあるんだが、基本的には好きなので一応期待している。
ただ、この手のお話で非常に重要に思える「主人公が異世界の人間に認められ、のし上がっていく過程」がスコーンと飛ばされているのが気に入らない。
主人公は異世界に呼び出されました、右も左も、言葉さえわかりません!状態から一気に2年が経過し、宗主様と持ち上げられ状態まで物語がスキップされている。
その2年が大事だろ!?そこ重要だろ!?と言わざるを得ない。
内容的には、可もなく、不可もなく。
さして魅力も感じないが、途中で投げるほどの嫌味も、まあ、感じないか。
正直に言うと2年スキップがあった時点でかなり嫌気がさしたんだが、我慢して読み続ける価値くらいはありそうな予感がしている。(まだ中盤)
読了。
ネタとしては好きなお話なんだけど、文章的にはあんまり魅力を感じないなぁ。
現代技術を持ち出すタイミングや、その魅せ方が微妙でいまいち盛り上がらない。
例えば、鐙(アブミ)を活気的な道具として登場させるわけだけど、それ以前に「鐙なしでの戦闘描写」がないので何がどう優れているのか感じにくい。
古代戦争に鐙というと岩明均の「ヒストリエ」なんかでもネタとして使われているけど、あの漫画で古代マケドニアの騎士達は鐙なしでも馬を乗りこなしている。
そのイメージが頭にあるせいか、どうしても「鐙のない時代の古代人は馬にまともに乗ることさえ出来ない」って説明だけではすんなり頭に入ってこなかった。
もう少し、言葉を費やして状況を組み立て、熱く盛り上がるような表現をして欲しいなぁと、そんな風に不満を感じる場面が多々見られた。
日本刀に関しても同様。持ち出し方が唐突過ぎて、「これは凄いことになるぞ!」というような盛り上がりを感じない。惜しい。
この作者、いまいち文章的に俺にはあわないのかもしれない。
戦記ものとしては、杉原智則 の烙印の紋章や、川口士の魔弾の王と戦姫当たりと比べると本格さが足りないと感じる。
ぶっちゃけてしまえば、ワクワクする描写や場面がなかった。
主人公が獅子の貌を覗かせる重要なシーンがあるんだが、そこも唐突過ぎていまいちこう、盛り上がらない。
もうちょっと熱くなれる文章なら良かったのに。
ただ、この手の「現代知識で古代戦争に勝利する」ってネタは大好物なので、続きにはもう少しだけ期待したい。
この手のネタでは重要と思える、火薬と鉄砲ネタをどう扱うのかも気になる。
そんな大ネタをどうするかも大事だけど、むしろ小ネタに何を挟んでくるかに期待したい。
- 感想投稿日 : 2013年12月9日
- 読了日 : 2013年12月9日
- 本棚登録日 : 2013年12月9日
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