皆さんは「心の理論」という言葉をご存知でしょうか?
アメリカの動物心理学者、デイヴィッド・プレマックらが提唱した「同種の仲間であれ、他種の個体であれ、他者の行動に「心」を帰属させること」だそうですが、少し難しいでしょうか。
では、もう少しわかりやすく、私なりに説明してみます。「他者にも心があり、その心に従って行動していると理解できること」が、「心の理論」です。
例えば、他者の目的・意図・知識・信念・思考・疑念・推測・ふり・好みなどの内容が理解できるのであれば、その人間は「心の理論」を持つことになるのだそうです(プレマックらの定義による)。
どうですか?だいぶ「心の理論」がどのようなものか、イメージできましたか?
ひとつ、「心の理論の有無を調べるリトマス試験」とも言われた「誤った信念課題」をやってみましょう。
問:「A君は、大好きなチョコレートを〈赤い〉戸棚に隠してから遊びに行きました。A君がいない間にお母さんがケーキ作りに必要になって、A君が隠したチョコレートを使いました。使った後、お母さんはチョコレートを〈青い〉戸棚にしまいました。ケーキ作りが終わり、お母さんは買い物に出かけてしまいました。お母さんの不在中にA君は帰ってきましたが、A君はどこにチョコレートがあると思っているでしょう?」
正解は〈赤い〉戸棚です。
「心の理論」は、年齢に応じてより複雑なことがわかるように発達していきます。
例に挙げた問題のように、物語中でのキャラクターの勘違い(誤った信念)を理解できるようになるくらいに発達することで、小説やドラマが理解できるようになり、子どもたちの世界はますます広がってゆきます。
また、「心の理論」と似たようなものに「アニミズム」があります。モノに魂を見出す考え方です。
幼児であれば、「机さんが痛がっている」という表現をしたり、大人でも、「この車、頑張って動いてくれよ~」という表現をしたりしますね。
私は、「漫画のキャラクターに夢中になる若者」というテーマに長年興味があり、卒業論文もそのことに関連して書いたことがありますが、そのような現象も、「心の理論」やアニミズムと大いに関係があると思います。キャラクターに夢中になる人たちは、キャラクターたちにも心があると考え、その言動のもととなる心を理解しているからです。また、登場人物たちが窮地に陥っている時に「こうすれば良いのに」と思えるのも、誤った信念が理解できているからこそでしょう。
私たちが漫画、小説、ドラマ、映画などを楽しめている背景にある「心の理論」について知ってみませんか。
難しい科学や心理学用語はありません。気楽に読める良い本だと思います。
文責:アオイ(人文社会系研究科 文化資源学研究専攻)
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=2001203320
- 感想投稿日 : 2017年5月3日
- 本棚登録日 : 2017年5月3日
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