『旧約聖書』の「創世記」第4章のカインの逸話は、どう捉えるべきなのか困惑する典型的なものの一つだ。この作品は、戯曲形式によって、この問題に対するバイロンの解釈を示したものである。バイロンは聖書のこの場面には登場しないルシファーをして、カインに広大な宇宙空間から地球を遠望させ、また人類以前に絶滅した種族を語って聞かせる。このあたりのスケール感は見事だが、全体には劇的であるよりも、いたって形而上的な内面のドラマといった趣きが支配的だ。バイロンは殺人者として荒野を彷徨うカインの姿にこそ人間の本質を見たのだろう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
☆イギリス文学
- 感想投稿日 : 2013年11月16日
- 読了日 : 2013年11月16日
- 本棚登録日 : 2013年11月16日
みんなの感想をみる