女のいない男たち

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  • 文藝春秋 (2014年4月18日発売)
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6つの短篇を収録。ただし、最後のは「あとがき」のようなものなので、5つの物語+1といったところ。いずれも、シングルモルト・ウイスキーとビターチョコレートの味わいだ。恋の物語は、通常はその成就までを描くが、ここではその喪失を描く。鷗外の『舞姫』に似た手法だ。失われた時間は、それ自体でロマネスクだという意味において。タイトルは「女のいない男たち」だが、内容的にはむしろ、男にとっては、とうとう最後まで理解の及ばない、女のある部分を描いた小説だと思う。つまり、これは喪失とすれ違いの末に取り残された男の物語なのだ。
 篇中でもっともせつなかったのは「イエスタデイ」。ちょっと珍しいのは「吉備津の釜」(『雨月物語』)の物忌みを思わせる「木野」か。
 また、「木野」にトーレンスのプレーヤーとラックスマンのアンプとJBLのスピーカーを組んだオーディオが出てくる。たしかにジャズを聴くのだから、これでいいような気もするが、トーレンスとラックスマンの組み合わせなら、スピーカーはむしろタンノイかと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ☆日本文学
感想投稿日 : 2014年4月20日
読了日 : 2014年4月20日
本棚登録日 : 2014年4月20日

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