明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

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本棚登録 : 1209
レビュー : 193
著者 :
vilureefさん  未設定  読み終わった 

まさか山田詠美にここまで泣かされるとは思わなかった。
読み終わるとただただ呆然としてしまい、しばらくたっても思い返すと涙がにじんでくる。
彼女の作品は今まで恋愛ものしか読んだことがなかった。
インテリな女と肉体派の男の恋愛を書く作家という勝手なイメージを持っていたので、家族を扱ったこんなにまで胸を打つ作品を描き出すとは。
私が今年読んだ本の中で一番の作品といってもいいほど。

物語は二つの家族が親の再婚により一つになり、さらに新しい命も誕生し新しい家族としてスタートした澄川家。
それは誰もが羨むまさに幸せを絵にかいたような家族だった。
しかし、長男の不運の死によって家族の様相は一変し、息子の死を受け入れられなかった母はアルコール依存症となっていく。

長女、次男、次女のそれぞれの視点から物語は語られるが、とりわけ次男の創太が絡んだ場面になると、もうだめだ。
涙腺決壊。胸がキューンと苦しくなってくる。
次男は父の連れ子で母とは血がつながっていない。
その彼が母と出会った時からずっと一貫して、母が壊れてしまってもなお母に愛されようと寄り添い続ける姿はなんとも切ない。
決して愛情を平等に分け与えるような聖母のような母ではないのに。

ただ、この物語は単なる継子のお涙ちょうだいではもちろんない。
幸せの象徴だった長男の死が重要なファクターだ。
死を抱えながら生きていたらこの母のように精神が徐々に壊死してしまう。
それをどうやって家族は乗り越えていくのか。
決して暗い話ではない。
死者への執着よりも、生きている者が一番大事なんだという作者のメッセージが強く感じられた。
血よりも濃い家族の絆、そして家族の再生。
ラストは希望に満ちた素晴らしい終わり方だった。

新聞や雑誌、各所で取り上げられ、気になっていたこの本。
普段だったら山田詠美は積極的には読まないけれど、読んでみて分かった。何しろ傑作である。
もちろん文章の綺麗さ、巧さは間違いない。
山田詠美と聞いて尻込みする人にも是非読んでもらいたい素敵な作品である。

レビュー投稿日
2013年5月30日
読了日
2013年5月30日
本棚登録日
2013年5月30日
20
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『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』のレビューへのコメント

nobo0803さん (2013年6月2日)

こんにちは♫

はい。山田詠美と聞いて尻込みをする人の1人です!
vilureefさんが書かれた、インテリな女と肉体派の男の恋愛を書く作家・・うまい!!と思わず拍手したくなりました(笑)
そうなんです、山田詠美さんのイメージはまさにその通り。
でも、この本は全く違いますね!!
早速チェックします( ..)φメモメモ

vilureefさん (2013年6月3日)

またまたnobo0803さん、こんにちは。

そうですよね、山田詠美ってい言うと初期の作品のイメージでしょうかね?
なんとなく受け入れがたい感じがあって・・・。
と言ってもそんなに読んでいないのですが(^_^;)

ですが、この本を読んで是非その先入観を覆してください。
木皿さんの本はきっと万人受けなんでしょうが、この本の完成度の高さと言ったら。
私はこちらの本に軍配を上げます!
って、どうでもいいですが(笑)

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