- 52ヘルツのクジラたち
- 町田そのこ
- 中央公論新社 / 2020年4月25日発売
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少年の年齢設定がもうちょっと低かったらリアリティあったんじゃないかな。惜しいなと思う。
13歳の少年って警戒するレベルだと思うのだけれど、どうなんだろう…
ちょっと引っかかった。
2021年6月4日
- 往復書簡 初恋と不倫
- 坂元裕二
- リトル・モア / 2017年6月26日発売
- Amazon.co.jp / 本
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ここ数年、坂元裕二脚本というだけで無条件でドラマを見てきました。どうしようもない切なくてやるせない気持ちがいちいち刺さってくる名作ぞろいでした。
しかし、anoneを最後にしばらくドラマから遠ざかると知り、坂元ロスになりました。
心に空いた穴を埋めるためにこの本を読みました。
なんだろ、逆にもっと寂しくなりました。
どこかで聞いたセリフ、どこかで見た設定、すべてが坂元さんの世界で埋め尽くされていました(当たり前)。
「初恋」の方が断然好きだと途中まで思いながら読み進んでいましたが、最後の最後の場面で、もちもとさんとあおばさんを見つけたような気になって、なんだか嬉しくなりました。うん、「不倫」もよかった。
でもやっぱり坂元さんの生み出す言葉は、生身の人間のしゃべる声で聴きたい。坂元作品に出演する俳優陣が名優ぞろいなのか、彼の作品によって名優になるのかわからないけれど、一つ一つのセリフに命が込められているような。
なんだか陳腐な言葉しか並べられない自分が嫌になるけど、坂元さんのドラマが好きってことです(笑)
ドラマがだめなら秋になったら舞台を見に行こうかな。
どんな俳優さんが出てくるんだろう。チケット取れるかな。
今年の目標はお芝居を見に行くこと!を勝手に宣言してるので、頑張ってチケット争奪戦に参戦しようと思います。
すいません、変なレビューで。
2018年4月11日
- はやく老人になりたいと彼女はいう
- 伊藤たかみ
- 文藝春秋 / 2017年11月10日発売
- Amazon.co.jp / 本
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伊藤たかみってもうちょっと女性の心情を書くのが巧いと思っていたんだけれど、この作品には共感できず。
なにより自分の息子が行方不明になっているっていうのに、元恋人と缶チューハイ?ビール?(記憶があやふや)飲んだりしてる時点で、ないなー。
大人のための絵本とは言うけど、設定に無理があるよ。
残念・・・。
2018年4月10日
久々の上下巻、期限内に読み切るかなと不安だったけど、全くの杞憂だった。登場人物が多くて混乱する場面はあったにせよ夢中で読んでしまった。とにかく面白い。一級のミステリー。
この作品は面白いだけじゃなくて完全に社会派ミステリー。
根底には作者の強い危機感が流れている。
ここ数年、秘密保護法や共謀罪の成立をめぐってメディアで大きく取り上げられたりデモが繰り返し行われた。
正直、私は実害を感じることもなく対岸の火事のような思いで、きちんと目を向けることもなかった。
むしろ、なぜメディアは大騒ぎしているんだろうと。
この本を読んで完全に考えが変わった。なるほど、そういうことだったのかと。
小さな火のうちに消しておかないと取り返しのつかないことになる。太平洋戦争の時に日本で何が起こっていたのか。自由にものが言えない結果どうなってしまったのか。
他のレビューでも書かれているとおり、いささか戦時下の描写が長すぎる気もする。しかしこのくらい詳細に描かないと伝わらないのかもしれない。
作中にもあるように、戦争体験をしてきた人はみな高齢になっていて、直接話を聞く機会も格段に減っている。
だからこそ今のうちに書いておかなければならないのだろう。
その他の描写は全くだれることもなく手に汗握る展開の連続。それぞれのキャラクタの人間味あふれる個性が緻密に計算しつくされたプロットに相まって、どんどん引き込まれていった。
最後の最後の手紙がこれまた泣かせるんだな・・・。
この小説に心わしづかみですよ(笑)
太田愛さんて初読みだったけど、なるほど脚本家なのねー。
納得です。もちろん小説家としても一流ですね。
東野圭吾なんかより断然面白いんじゃないの?
この作品、シリーズものらしいので他のも全部読みますよ。
あの主人公たちにまた会いたい!
できることなら映像かも是非!
でもどうしてこんな面白いのに本屋大賞ノミネートされてないの?不思議ー。
2018年2月16日
ちょっとまえに「北斎とジャポニズム展」を見に行ったとき、日本の浮世絵がパリでブームになったことがあるという浅い知識はもっていたが、まさかここまで当時の印象派に影響を与えたとは思っておらずひどく驚いた。
その流れもあり、いいタイミングでこの小説。
ゴッホと浮世絵か、面白そうなテーマだなと手に取ることになった。
結論から言ってしまうと、ちょっと中途半端かな??
主人公が架空の人物加納重吉だとしても印象が弱い。
ジャポニズムブームをけん引したとされる林忠正の生きざまを描くだけでも十分読み応えがあっただろうし、いわんやゴッホもしかり。おまけにゴッホを生涯支えた弟のテオもここでは主要登場人物の一人である。
マハさんが一番描きたかったのは誰だったのか、なんだったのか焦点がぼけてしまっているのが残念。
それを抜きにしたとしても、さすがのマハさんなので最後まで面白く読めた。
ゴッホの有名な絵が小説の至るところにちりばめられていて、その描かれた背景を読むのも楽しかったし、ゴーギャンとの交流も興味深い。
なによりの収穫は浮世絵うんぬんより、弟の存在かな。
この弟なくしてはゴッホは画家として大成しなかったんだと思うと感慨深いものがある。良い弟を持って良かったね、ゴッホにいちゃん(笑)
あと、これは私の問題なんですが、ついマハさんのアート小説を読むとき伝記を読んでる気になってしまうのが悪い癖。
あくまでもフィクションですよって、わかっちゃいるんですけどね・・・。自分の知識が乏しく、マハさんの緻密な下調べと相まって勘違いしそうになっちゃうんですよ。鵜呑みにしてしまわないように気をつけます。
2018年2月6日
太平洋戦争時に多くの日系人がアメリカの捕虜となった。
ぼんやりとした知識は持っているけれど、詳しくは知らないし、この史実をもとにした小説や映画もまったく触れた事はない。
戦後70年を超え、徐々に戦争が風化している。
戦争からたった30年しかたっていない頃に生まれた私でさえ、戦争についての知識は乏しい。もう平成も終わるこの日本にあって、今の若者たちの戦争への意識はどんなものなのか。
改憲に向けての流れは変えられないのかもしれない。
9条の重みは薄れ、自国は自国で守るべきなのかもしれない。
でもその前に知らないといけない。
日本が最後に戦ったあの戦争で何が起こったのか。
日本で、アメリカで、中国で、マリアナ諸島で、マレーシアで。
知識こそ一番の武器だ。
この本には日系人が戦時下において、どれほどの辛酸をなめたのかが描かれている。
小手鞠るいさん、書いてくれてありがとう。
私に知識をもたらしてくれてありがとう。
アメリカ在住の作家さんならではの切り口で、日系人のリアルな生活感が伝わってきて良かった。
作品によってだいぶ評価が乱高下してしまうけれど、「アップルソング」やこの作品のようリアリティのある作品の方が性に合ってる気がする・・・。
2018年2月1日
アメトーーク!で光浦靖子が泣ける本として紹介してたのがこの本。
柳美里と猫の組み合わせが意外で、しかも泣けるとはどんなもんかなと思って手にとってみた。
4編からなる本書だが最初のお話「ニーコのおうち」。これ泣いちゃったなぁ。
何しろ切なくって。おばあさんもニーコも。
デスマス調で童話っぽい雰囲気で語りかけて来るのが追い打ちをかける。
柳美里ってこんな小説書く人だったの?
自己顕示欲が強くて、私小説を描く典型的な作家だと勝手に思っていたけれど、この小説は全く違う。
自己を捨てた他者に寄り添った小説だ。
インタビューを読んでもわかるように、東日本大震災が彼女に与えた影響ってずいぶん大きなものだったようだ。
苦しんでる人たちの救いとなる小説を書いたというこの作品。その意義は十二分に感じられた。
とはいえ、猫を愛する人間として単純に、涙なしには読めない猫小説の傑作として読んだ方がいいのかもしれない。
嫌なこと辛いことみーんな忘れちゃって、ただ膝の上に乗る猫を撫でる幸せ。
それに代わるものなんてこの世にあるだろうか。
2017年12月21日
真珠の首飾りの少女が来日して話題になったのは記憶に新しい。もう少し遡るとスカーレットヨハンソンで映画化されたこともあった。
来年は大掛かりなフェルメール展もあるようだし、なんだか最近のフェルメール人気はすごい。
この小説もこのブームにあやかってのものなのかもしれない。
フェルメールの知識を全く持たない私にとって、入門編として興味深くそして楽しく読むことができた。
ただ謎の多いフェルメールなんだから思い切ってもっとフィクション色を強くメリハリのあるストーリーにしてしまうのも手かなぁとも思うけれど、その辺りのさじ加減が難しいんだろうなぁ。
実在した画家を小説にすると言えば、原田マハを抜きにしては語れない。彼女の史実とフィクションを絶妙に織り交ぜた作品群とこの作品を比べてしまうとやや劣るのは致し方ないか…
とはいえ、この時代のオランダの人々の暮らしぶりや文化、街の様子、その辺りが生き生きと描かれていて非常に興味深かった。
まだ前述した映画も見てないし、私のフェルメール熱が冷めないうちに見ないと!
来年のフェルメール展も行きたいけど、これまた大混雑だろうなぁ、まいるな…
2017年12月5日
宮沢賢治の生涯を父の目線から描いた本作。
正直、この本を読むまで宮沢賢治がどんな人生を歩んだのか考えたことすらなかった。
教科書に載っていたいくつかの作品と、個人的には「銀河鉄道の夜」を読んだことがあるだけだ。
原文のままだと子どもだった私には難解に思え、大人になると童話作品に興味を持てずにいた。
これだけ有名な作家なのになぜここまで興味を持てなかったのか考えてみると、勝手に描いていた賢治像のせいかもしれない。
貧しい農民のために尽力した聖人君子のような人。
これが私の賢治に対するイメージである。
「雨ニモマケズ」ってなんだか説教臭い。そんな思いで敬遠していたのかもしれない。
で、この本。
いやまるで違うじゃないか!
金持ちのボンボンで苦労知らずな我儘息子。
勉強はできるけれど、自活できない脛かじり。
生涯モラトリアムだったんじゃないかと思うほどひどい。
そんなダメ息子の才能を信じ、支え続けた父がすごい。
フィクションの部分が多いにしても、生前まるで本が売れなかったにもかかわらず作品を創作し続けることができたのは、まぎれもなく父親の経済力あってのことだろう。
こんな賢治の姿を知ってがっかりしたかというと、まったくそうではなかった。
聖人君子だった賢治が一気に身近な人間としての賢治となった。
さまざまな葛藤を抱えながら生きた賢治、その生々しい姿を想像しながら改めて「雨ニモマケズ」を読んだ。
やだ、「雨ニモマケズ」読んで涙出ちゃったの初めてよ。
そうか、そうだったんだ。そう言うことなのねって勝手に解釈して納得。
この本一冊で宮沢賢治を分かったつもりにはならないけど、もっと読みたいと思う気持ちが俄然出てきた。
さて、何から読もうか・・・。
門井慶喜さん、ありがとう。こんなに分かりやすく小説にしてくれてありがとう。感謝です。
2017年12月1日
- 枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い (朝日選書)
- 山本淳子
- 朝日新聞出版 / 2017年4月10日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
日は入日 入り果てぬる山の端に 光 なほとまりて 赤う見ゆるに 淡黄ばみたる雲の たなびきわたりたる いとあはれなり
枕草子の後半に書き連ねてある「日、月、星、雲」の段。上の部分はその中の「日」の段にあたる。
初段の「春はあけぼの」にも通じるお題ありきの構成をとる。自然への洞察力に長け軽妙で小気味いい清少納言らしい文章だ。
もちろんこれだけを読んでも十分に枕草子の世界を堪能できる。
ただ、この背景にあるものを知ったらどうだろう。また一段と作品世界が広がることは間違いない。
この本によると、おそらく「春はあけぼの」は定子の生前に書かれたもの。そして上に上げた段は定子の没後に書かれたものとある。
平安という雅の中にありながらも、時代の波に翻弄された悲劇の中宮、定子。
そんな彼女の心を慰めるため、そして彼女の魂を鎮めるために書かれたのがほかでもない枕草子だったのである。
いったんこの作品がある種の挽歌だったと知ると、枕草子における清少納言のきらびやかな貴族社会への執着に合点が行った。
もともと山吹の花のくだりが好きで、ここを読むと定子の清少納言への愛情の深さに胸がいっぱいになってしまうのだが、この本を読んだ今はどのくだりを呼んでも清少納言の定子への思いがひしひしと伝わってきて切ない。
高校の授業で出会った枕草子。
知っているようで全然知らなかったその世界。
一筋縄じゃいかない。
だからこそ面白い。
平安の時代に思いを馳せながら、読み耽るのもいとあわれなり(笑)
尊敬するブク友さんから紹介された素敵な本です。
読んでよかった。
ありがとう~♪
久々のレビューでした!
2017年10月17日
最近あんまりレビューを書いていないので、どうしようとも思ったんだけれどやっぱり書いておくことにした。
だって、なんだろ、ドンピシャだったんだもの、この作品。
話題作の「みかづき」も確かに良いんだけど、私は断然こっち。
短編一つ一つに描かれている心象風景が、鮮やかに目の前に浮かびあがってきて、私の心の奥底からぐーっとあふれ出てしまうようなそんな気持ち。
森絵都って、もしかして断然短編が上手いのかな?
数多く読んでないのでなんとも言えないのだけれど・・・。
どれも甲乙つけがたいのだけれど、一押しは表題作の「出会いなおし」。
共感度200%ですよ。
私、日ごろから人って良い所も悪い所もある。良い時も悪い時もあるってそう思ってて、だからあんまり人を嫌いになりたくない。
出来れば出会った人はみんな忘れたくないし、いい思い出にしておきたい。そんな風に思っていて。
離れてしまっても根っこでは繋がっているような。
青臭いのかな?
でも上手く説明できないこんな私の気持ちをこの作品は代弁してくれているような気がして。
どの作品も良かった。
読んで幸せな気分になった。
森絵都が好きになった。
もっと読んでみよう。
2017年10月18日
今日ディーラーに車の点検に行って来た。
待ち時間に読みかけのこの本を読む。
物語もいよいよ終盤。
参った、涙で視界が滲んでくる。
そんな時に「お待たせしました」って営業さん。
涙止まらないし、鼻水すすってるし、ちょっとおかしなおばさんて思われたかも。
いやー、今年読んだ中で(大した数読んでないけど)間違いなくダントツ一番。
ミステリーと恋愛がどちらも破綻せずに融合していて、この面白さ。
佐藤正午の本は好きな本いっぱいあるけど、これ一番好きかなぁ。
時間軸を行ったり来たりする展開や、すれ違う男女、SF要素が入っているいるところ、どれもこれもまさに佐藤正午なんだけれど、まったく使い古されてないしマンネリ感もない。
純粋にその世界にはまって、どうしようもない心のありようにただただ途方に暮れてしまった。
こんな恋したいよねー(笑)
読みたい本もさほどなく、読んでも熱中せず、ブクログからは遠ざかり…
ご無沙汰しております、フォロワーのみなさま。
こんな私ですが、この本のレビューだけは書きたかった。
一人でもいいからこの本を読む気になってくれると嬉しいなぁ〜
2017年6月15日
アイとは“i(私)”であり“identity"なんだろうなと勝手に解釈する。
西さんの本を読むのは「サラバ」に続いてまだ2冊目だけれど、世界観というか自己肯定感というか共通するテーマが根底に感じられた。他の作品もそうなのだろうか。
この本を読んで、以前にNYで知り合ったネパール系アメリカ人の女性から聞いた話を思い出した。
彼女の妹も、もちろん生まれも育ちもアメリカ。医師の資格を持ち、NYで揺るぎない生活を送る未来があった。しかし自分の中にぽっかりと空いた穴(彼女はemptinessと表現した)を埋められずネパールに渡ったと。
おそらく、多民族国家や、大陸においては養子にかぎらずとも自分の出自、アイデンティティについて考える人は多いのだろう。
日本が特殊なだけで。
そう言った意味で、このようなテーマをストレートに投げかける西さんは今までにない新しい作家という気がしてならない。
ぜひ若い人に読んでほしい。
自分を見つめることは世界に目を向けること。
いい作品でした。
2017年2月24日
こんなに夢中で本を読んだの久しぶり。
文句なしに面白かった。
恩田さんに最初に出会ったころは運命の人かと思うくらい夢中になって、付き合いが長くなってくると裏切られることも数知れず・・・。
そんな恩田さんと私の付き合いだけど、やっぱりついて来て良かった。
ありがとう、そして直木賞おめでとう。
「音楽を広いところに連れ出す」
これがこの本の大きなテーマ。
でもね、この本を読みながら恩田さんは私を私の狭い世界から広い世界へと連れ出してくれた。
500ページの上下段組み。
あまりの長さに最初はひるんだけど、最後はもう終わっちゃうの?って淋しくなっちゃった。
もっともっとこの世界に浸っていたかった。
最後に☆5つつけたのもう1年以上前の話。
読んでも読んでもこれだ!って言う本に出会えなくて。
最近は本を読むことも億劫になっていたけれど。
この本を読んでいる最中は、まるで亜夜がピアノ演奏中に感じるような多幸感に包まれた気分になった。
やっぱり読書はいいね!改めて再認識です。
2017年2月2日
暇つぶしにはもってこい。
スキャンダラスで陳腐なストーリー。
下世話な週刊誌を読んでるのとたいして変わらない。
その程度の本。
実際の事件をモチーフにしている作品は色んな作家が書いている。
桐野夏生の「グロテスク」しかり、角田光代「森に眠る魚」しかり、吉田修一の「さよなら渓谷」しかり。そうそう、「怒り」もそうだ。
それぞれが実際の事件犯罪を昇華して、オリジナリティを持たせている。
でも、これはどうだ?
テーマが先行するやっつけ仕事感がありあり。
というより、吉田さん、こんなのしか書けないの?
純粋なオリジナル作品読みたいな・・・。
2017年1月23日
森絵都に対して勝手に優等生イメージを持っていた。
文章は巧いけれど、さほど心に残らないような。
それより何よりほとんど読んだことないじゃない(笑)
新作?の「みかづき」が面白いよ、と友人に勧められたが図書館の予約はいっぱい。
それならとこの本を手に取ってみた。
あら、あら、あら。
いいじゃない、森絵都。
こんなに尖ってる文章書く人だったの?
うんうん、少年の思春期特有の感じ、分かる分かる。
一緒に大人に反抗して、校庭駆け出して、背伸びして。
スカッとした。
思春期だけじゃないよ、アラフォーのやり場のない気持ちだって書いちゃうよ。
大人になったってぐずぐずよ、うんそうよね。
もうちょっと読みたい。え?もう終わり?
この絶妙な終わり方、すごいわ。
短編、上手いねー。
長編はどうなんだろう?
森さんの長編てどれがお勧め?
どなたかお勧めありますか?
2017年1月23日
木内さんの才能は稀有まれなものだと思っています。
全部読んだわけじゃないけど、全部傑作です。
絶対的な信頼感を持っています。
この本も間違いなく傑作です。
木内さんの渾身の作です。力入ってます。
だって初の上下巻ですよ(多分)。
でもね、残念ながらここまで主人公に魅力がないのも珍しい。
全く共感できない。共感どころかむしろ嫌悪。
読むのが辛くて辛くて。
物語は激動の時代を描いてそれなりに読ませるんだけど、読めば読むほどうんざりするの、主人公に。
読者も辛いけれど、作家も辛いと思うの。
ここまでいやな男にずーっと付き合うの大変よね。
いや、まったくの勝手な意見ですけど・・・。
映画化されて松坂桃李あたりが主人公演じたら、違うかな。
そしたら全然違う話になっちゃいそうな気もするけど(笑)
2017年1月23日
歴女には程遠いし、時代小説もほとんど読まない。
大河ドラマも興味がなく、戦国武将もあやふや・・・。
そんな私がおもしろい!と思えたこの小説。
直木賞の審査員からは「これは小説ではない」との厳しい意見も出たようだが、個人的にはこれはこれでいいのではないかとも思う。小説の形態は色々あっていいではないか。
まあ、しかしこの本の主人公は家康ではない。
関東のど田舎だった江戸を立派な都に至らしめた陰の主役たちに光を当てている。
利根川の流れを変え、飲み水を引き、貨幣を流通させる。
さらにシンボルとしての天守閣の建設などなど。
どれもこれもへ~っと驚くことばかりで、ちょっとこの知識を自慢したくなった。
利根川って元々どこに流れてたか知ってる?
井の頭ってどうして井の頭だと思う?
金座って聞いたことある?
とかね(笑)
この本を読んでから全く興味のなかった皇居東御苑も行ってみたいなと思うようになった。
知ってると知らないじゃ大違い。
面白く小説として読ませてくれた本書、とっても良かったです。
2016年9月7日
井上荒野の凄みを今更ながらも感じた圧巻の本だった。
文句なしの☆5つ評価。
死にまつわる短編集。この中にはなんと10もの短編が収められているのだが、全く短編とは思えないほど中身が濃い。
一編一編の完成度が非常に高く、それぞれについてじっくりとレビューしたいほど甲乙がつけがたい。
お盆にちょうど読んでいたこともあり、新盆を迎える私の心情とシンクロしてしまったのか思った以上に感傷的になったかもしれない。
でもそれを抜きにしても、この作家の全てを書かずに心の動きをこれほどまでに鮮やかに描き出す手腕はさすがとしか言いようがない。
ちょっと前に読んだ他の作家の理屈っぽい長編小説よりもよほど心打たれるものがある。
印象に残ったのはバーの常連客にまつわる話「ドア」、見ず知らずの人のブログに共感していく主人公の話「どこかの庭で」、そして作者には珍しく社会性のあるメッセージの込められた「雨」。
どの物語も心にと言うか、胃に訴えてくる感じ(笑)
ぎゅーんと掴まれるように切ない、やるせない、遣り切れない。
そしてなんといっても「母のこと」。
これはもう井上さんの完全なる私小説でしょうね。
こんなに身近にまっすぐと感じた事はないくらいひねりもなんにもない。ストレートで端正な文章。
いつもとは違った作家の横顔を見たようでうれしいような悲しいような・・・。
書く事で母の死を乗り越えることができたんでしょうね。
とても良かった。心に響いた。
井上さんの短編の巧さはピカイチだなと改めて感じた作品。
次作も期待しています。
2016年8月17日
同郷だというのに全く知らない作家さんでした・・・。
いやまさか、これほどの力を持った作家がこれほどまでに日の目を見ないでいるなんて!
地元の本屋さんに特設コーナー作れってお願いしたい気分です、はい。
これこそ大人の小説。
大人の小説と言うか中年のための小説と言うか。
多分この本を10年前に読んだとしても全然よさが分からなかったと思う。
滋味深い山菜の味や旬の野菜の瑞々しさがさほど重要でなかったように、若いころにはこの本のよさがきっとわからない。
物語の主人公は東京で菜飯屋を一人営む夏子。
15年連れ添った夫と別れた後に開いた小さな店。
気取った料理ではなく季節ごとの野菜をふんだんに取り入れたお総菜が出てくるご飯やさん。
それぞれの客の気持ちに寄り添って暖かいご飯をそっと差し出す夏子。
いやー、いいなぁ、こんなご飯やんあったら毎日でも通いたくなっちゃう。ここのお客さんがなっちゃんについつい甘えちゃうのも分かるよ、うん。
でも夏子だって人間だし一人の女性。
四季折々季節が変わっていくように、夏子の心情も晴れの日もあれば雨の日もある。
時には人恋しいし、中年の恋に破れる日もある。
そんな夏子の日常が丁寧に丁寧に描かれる。
それに夏子を取り巻く人々の個性豊かなこと!
商店街のしがらみもあるし、うっとおしい人間関係だってある。
いい人ばっかりじゃないし、裏の面だってある。
それでもなんだか人って良いなって思わせれくれる。
とってもいい作品。
淡々とした日常が続いて行くだけなのになごむし、前向きになれる。
中年、人生半ば、それもなんだか悪くない。
じたばたしながら歩いて行こうじゃないか、そんな気持ちになりました。
それにしてもご飯がおいしそう~
2016年8月3日
あちこちで絶賛されている本書だったので、初読みの作家さんだったけれど手に取ってみた。
むむ。
どうなんでしょうか。この安っぽいストーリー。
これが新聞連載が終わった時にはマチネロスに陥った読者多数とも言われた小説なのか?
アマゾンの評価もぶっちぎりの高評価だけれども・・・。
物語は簡単に言ってしまうとクラシックギタリストの蒔野とジャーナリストの洋子の恋愛もの。
強く惹かれあう二人は運命のいたずらかすれ違い別々の人生を歩むようになる。
何度も繰り返される「未来は過去を変えてくれる」の台詞だったり、国際政治問題への提言の数々、豊富なクラシックの知識を土台に芸術家特有の苦悩を描く筆力、などなどなど、完成度の高い作品であることには間違いがない。
でも、いかんせん陳腐だよ。
使い古したネタが昭和かよってつっこみたくなってしまうメロドラマ感・・・。
もしやこの小説はストーリーはさておき、登場人物一人ひとりの綿密な心理描写だったり、ストーリーに肉付けされた芸術性やら政治問題を堪能するものだったのか。
それだったらもうちょっと楽しめたのかもしれないなぁ。
ごめんなさい、どうしても世間の評価と乖離があるようで・・・。
2016年8月3日
良かったです、期待以上に。
新聞連載ということもあってかぴたっと字数制限に収まっている(だろう)文章が好ましい。
短い文章の中の彼女の想いがきちんと入っていて、かつ起承転結もあり飽きない。
芥川賞候補になった作家に失礼とは思うが、巧いなと思った。ちょっと優等生じみているところはあるけれども。
ブクログのレビューは賛否両論分かれている。
嫌な人はとことん嫌なようで。
私は好きだ、このエッセイ集。
テーマが夫というのもなんだか潔いし、タイトルを裏切らない可愛らしさ。
実に正直に生真面目にナオコーラさんが書いているので一緒になってイラっとしたり、全然可愛くないじゃないか!などと憤慨しながら読んだ。
でも全体的にはなんとも言えない幸福感に包まれている感覚。
ナオコーラさんのような人、いるいる。
おとなしくて人前では意見を言わないんだけれど、実はうちに秘めた想いを抱いてる人。
外見とは裏腹に洞察力の深い人。
私は、こういう人を見つけるとどうしても仲良くなりたくなってしまう。片思いのことも多いけれど。
思ったことが先走ってしまう私にはちょっと羨ましい。
おまけに作家だなんて!
良いなぁ。
今までデビュー作?しか読んだことがなかったけれど、今や興味津々。
ナオコーラさんの本ぜひ読んでみたいです!
2016年7月16日
伊藤整の60年前に書かれたエッセイがベースとなっているこの物語。
すいません、伊藤整って聞いたことも読んだこともないんですけどベストセラーになったエッセイなんですね…
それはさておき、50歳になった普通の主婦聖子さんが主人公…といろんなレビューでも説明されている。
確かに50歳で、かつてはバリバリに働いていた女性で今はパート勤務。夫と社会人になった息子と言う設定はどこにでもいそう。
でも、この聖子さんはファンタジーの世界の住人だなぁと思ってしまう。
本来この年代の女性は様々な悩みや問題を抱えて辛いことも多かろう。
それが中島京子の筆にかかればどうだろう。
あっという間におとぎの国の主婦に変身してしまう。
だってとぼけている風だけど会話の多い友達のような夫もいるし、仕事をオファーされる能力も持ってるし、自分に想いを寄せる男性もいるじゃないか!
贅沢だよ、聖子さん!
この現実からちょっとだけ離れた世界がなんとも心地良い。
中島さんの独特の間合いとユーモアたっぷりの会話。いやみの全くない登場人物たち。
「長いお別れ」でも感じたことだけれど、現実世界に限りなく近い世界を描くことによって、深い共感と心地よさを感じられるのだろう。
ああ、やっぱり中島さんはすごい。
読んでいて本当に面白かった。
2016年7月16日