新樹の言葉 (新潮文庫)

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本棚登録 : 629
レビュー : 58
著者 :
関田熔心さん 小説   読み終わった 

あの有名な『人間失格』とは全くと言っていい程爽やかな作品。乳母を通した偽義兄弟との再会を題材にしていました。

まず、やはり「再会」を持ち出したことが『人間失格』とは印象が異なった。再会というのは希望や、明るいイメージの方が強い。己の愚かさを徒然と綴り続けるという、私が元来もっていた太宰治という人物像とは異なりすぎて、動揺しました。

主役となる男性も、そこまで卑屈にならず、再会を純粋に喜ぶという、素直で愛らしいところも見せていました。葉蔵とは似ても似つかない。この時太宰は何を考えていたのだろう、と勘繰らせてしまうような、そんな明るい希望を微かながら感じさせるものでした。

けれど、最後の火事のくだりはどうなのだろう。
読みこんでいない私が言えることではないが、初読の印象をそのまま述べるとするなら、少し背がぞわりとしました。
もともとは自分の屋敷であった建物が燃えていく様をじっと見つめて観察している。そこに、あの兄妹はいったい何を感じてるのかさっぱりわからなかったから。主人公はそれこそ強さだとは思っているようだが、本当にそれは強さなのか、もう少し動揺したり、感慨に耽ったりするものではないのかとも思った。けれどそれは太宰の文体で描かなかっただけかもしれないし、私の一方的疑心でしかありません。

いずれにせよ『人間失格』とはかなり違ったところが見られましたが、これはこれで私は好める作品だなあと思いながら読了。

レビュー投稿日
2010年7月19日
読了日
2010年7月8日
本棚登録日
2010年4月28日
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