グッドモーニングショー DVD通常版

監督 : 君塚良一 
出演 : 中井貴一  長澤まさみ  志田未来  時任三郎 
  • 東宝
2.81
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感想 : 46
3

バッドエンディングに疲れたので何も考えずに視聴できるものを求めて選んだ。なんか設定が面白そうだから気になってた映画だ。

朝のワイドショー「グッドモーニングショー」でメインキャスターをする澄田はいつもの起床すると、妻子が澄田が起床する時間に起きていた。「話があるの」意味深な声音で語る妻(演じるは吉田羊)、唐突に大学生の息子が「俺結婚するから」という告白をする。
どうやら相手に子供が出来てしまったとのこと。動揺する澄田だったが、出勤時間のため話半分で家を出ていかねばならなかった。
そんな始まり方をする一日は災難続きだった。

意味深に脅迫じみた熱い目線を送る圭子。どうやら傷心な彼女を澄田が慰めたのを勘違いしているらしい。彼女の初登場はコメディじみたホラーだ。タクシーで並走しながら電話をする圭子。なんでわざわざ並走すんだよ、てか気付かないのかよ。「私、今日発表しますから」と言って電話を切る圭子。濃い。初めから濃い。

澄田が担当する番組の制作陣も濃いこと濃いこと。芸能担当と報道担当は構成を奪い合う。ちなみに報道担当は林遣都。相変わらず爽やかで好きです。ワイドショーと部署の違う報道部に頭を下げて情報を取ってくる板挟みの役だ。まるで阿吽の呼吸で放送時間に合わせて準備を着々と進めていく。

その時、石山に呼び出された澄田は、番組打ち切り、キャスターも降板の危機であることを知らされていた。
一方オフィスでは、警報が鳴った。立てこもり事件発生を知らせるサイレンだった。それを聞き終わると同時にものすごい速さで軌道修正していく制作陣。

放送ギリギリで内容構成を変更し、スタート。あの思い込みの激しい圭子ちゃんはキャスターとして仕事をするとガラっとイメージが変わる。あんなに色っぽい話し方をしていたのに、報道場面では堅苦しいキャスターに早変わりだ。
圭子の《発表》を阻止するため、澄田はあの手この手で逃れる。絶妙なタイミングでのCM入りである。

立てこもり犯の要求はなぜか澄田だった。その連絡を受けた澄田は現場に逃げることになる。バイクにまたがり、出発する直前4月生まれは?とスタッフに訊くと「最悪です」と無下に答えられる。やっぱり当たるのね。

澄田には現場に出るには躊躇う理由があった。圭子の「おかげ」で立つことができたが、かつて、台風のあった現場報道で笑顔で顔に泥を塗りたくる場面をカメラに映されて、炎上してしまった過去があったのだ。

犯人の澄田ご指名のお蔭でワイドショーにはどんどん情報が入り込んでいく。名前が判明したときの林遣都の滑り込みはかっこいいので必見。好きです(二回目)。
警察の計らいで防弾・防爆スーツというガンダムのような装備を着込み犯人に近付く澄田。ワーカーホリックなのかマニアなのか変態くさいカメラマンのおかげで、生の映像を送り込むことに成功する。
心配する圭子に、同じサブキャスターの沙也は「死んだら社長賞ですよ」と冷たく返すところも好きです。一緒に生命保険の心配をする妻。澄田はとことん女運が悪いというか、いや、強かな女性に囲まれているので良いのか。

犯人の要求は澄田がテレビの前で土下座して謝罪することだそうだ。理由は「偉そうだから。そんなに偉いんですかあ?」犯人役の濱田岳の熱演が光る。澄田のトラウマでもある泥を塗りつける真似をして「サイテー」とつぶやいた。
土下座すらもショーとなりうるマスメディア。そんな澄田の姿に耐え切れず、声を上げたのは沙也だった。
澄田が笑顔で泥を塗りたくっていたのは、台風の被害で泥だらけの少年と同じ姿になって励ますためにしたことだったのだ。それが運悪く放送に入り、切り取られてしまったのだった。
澄田はそれを誰にも言わなかった(言えなかった)のは少年を巻き込んでしまうだろうという澄田の配慮ゆえだった。

少年のエールは被災者への侮辱に。
切り取られた映像は簡単に意味を変えてしまう。
澄田はそんなマスメディアの犠牲者だったのだ。

そんな時、圭子はチャンスだと思ったのだろう、
だから私はお付き合いしてます、と発表してしまう。
さすがにピー音で中止する制作陣。
それを聞いていた妻は冷静だった。「だってあの子のあの人ばっかり見てるけど、あの人の好みはもっと若い子よ」冷静すぎて怖いよ。さすがキャスターで片付けられるのか。

圭子によって混乱したスタジオだったが、制作陣は莫大な情報量の中から犯人の真相に近付いていく。実は彼はブラックな就労態勢と火災の原因を店長に押し付けられ、その抗議を澄田に代弁してもらおうと直接訴えに出たが無視された経緯があったのだ。
全てを明るみに出したあと、もう何も残すことはないと猟銃を自らの喉に突き付ける犯人。
そこで圭子が視聴者に呼びかける。犯人の命は捨てるべきか、とっておくか。残酷な二択だが、澄田や番組の願いに反して「捨てる」ことを視聴者は望んでいた。しかし、澄田は石田へのサインでその結果を改ざんするよう指示して、犯人を説得することに成功するのだった。

見世物としてのワイドショー。視聴者が全てで、楽しめれば良い。数字を追いかけていくうちに、倫理観などかなぐり捨てて時には道化にすらならなければならない。そしてそれを発信するのは同じ人間だ。いくらでも操作することができるし、多くの人間が関わり、影響が大きい。映画としてマスメディアの在り方を問うような作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画
感想投稿日 : 2018年1月11日
読了日 : 2018年1月10日
本棚登録日 : 2018年1月11日

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