太陽の季節 (新潮文庫)

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本棚登録 : 798
レビュー : 119
著者 :
vivobookさん 小説   読み終わった 

同じ時代の同じ年代の人にしか見えない世界がある。だから、若者が書く若者の物語には、その時代の若者にしか見えない世界が描かれていて、それは時に、同じ時代を生きる別の年代の人には理解し難いものだったりする。
この単行本に収められている物語(「太陽の季節」「灰色の教室」「処刑の部屋」「ヨットと少年」「黒い水」)も、当時の「年配者」には理解し難かったに違いない。
ただ、ある特定の時代・年代の人に深く共感されることを「時代性」と呼ぶとしたら、僕はこれらの物語に「時代性」よりむしろ「普遍性」を強く感じた。

確かにこれらが書かれた時代は、江戸末期以来久しぶりの“凪の時代”であり、その時代の若者に芽生えた感情は、それまでの“時化の時代”を生きてきた若者には持ち得なかった感情だったかもしれない。だから、当時はこれらが「時代性」の強い物語に映ったはずだ。
しかし、それから50年以上、長い“凪”の時代が続いたことにより、これらの物語が持っていた「時代性」が「普遍性」へと変化したように感じるのだ。

戦後以降、いつの時代の若者も同じように自分たちの時代を“特別な”凪の時代と捉え、過ぎ去った少し前の時化を羨ましく思いながら、冷めた空しさを抱えているのではないのだろうか。そして、いくら冷めていようが日々自分の奥から生まれてきてしまう熱を放出するために、刹那な快楽や暴力や危険に惹かれてしまうのではないのだろうか。

凪も時化も人が作り出すもので、その大きな動力は若者である自分達であるはずなのに、それに気付き、そのあり余るエネルギーを社会に向けて放出できる人は、残念ながらとても少なく、多くの若者は時代を盾に刹那に逃げる。
まぁ、僕もまたそんな大勢の若者のひとりだったのだが・・・。

著者をやがて政界に向かわせた動力が、少しだけわかった気がした小説だった。

レビュー投稿日
2016年9月11日
読了日
2011年2月7日
本棚登録日
2016年9月11日
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