週刊文春に掲載されたコラムを一冊にまとめたもの。
科学的な難しい話はほとんどなく、マンハッタンに滞在した2年間の日常が中心。

分子生物学者の福岡先生は語り口が面白い。
何気ない日常の中に散らばっている疑問が題材になっていることが多くて、読み手の知的好奇心を大いに刺激してくれる。

2016年1月6日

読書状況 読み終わった [2016年1月6日]
カテゴリ 福岡 伸一

自衛官の恋愛を描いた、有川ワールド全開の激甘短編集。
陸海空、自衛官同士、自衛官と民間人など、いろんなパターンの恋愛模様が6遍収められている。
有川さんの自衛隊三部作『海の底』の冬原さんの話、夏木さんの後日譚、『空の中』の光輝と高巳の後日譚もある。

ベッタベタであっまあま、チョコの上に生クリームをトッピングしてハチミツかけたくらいの激甘。
壁ドン(は無かったけど)・あごクイ・髪の毛クシュクシュ、読んでるこっちが照れ笑いしちゃうくらい。
こういうのを臆面もなく書けちゃうのが有川さんの素晴らしいところ。
突き抜けてる。

キュンキュンきちゃうのは、甘いだけじゃないところ。
時には1ヶ月以上も連絡が取れなくなる潜水艦乗りとの恋とか、自衛官だからと差別的な扱いを受けてうまくいかない恋とか、切なさも満載なのです。

小栗旬くん、綾野剛くん、菅田将暉くんといった今をときめく俳優さんでドラマ化してほしい。
ぜひ!

2015年12月26日

読書状況 読み終わった [2015年12月26日]
カテゴリ 有川浩

1996年に起きたエベレストでの大量遭難。
その時、ガイドとしてマウント・マッドネス隊の遠征に参加したロシア人登山家・アナトリ・ブクレーエフ氏の著書。
ライター(主に人権問題を扱う)のG・ウェストン・デウォルトがブクレーエフ氏や関係者に取材をして書いた部分と、ブクレーエフ氏本人の言葉で書かれた部分とで構成されている。

この遭難事故の直後に出版されたジョン・クラカワー氏の『空へ』を読んだなら、本書もセットしして読むべきである。
なぜなら、『空へ』では、ブクレーエフ氏はガイドとしての役目を十分に果たさなかったと批判気味に書かれていたが、本書はそれに反論する意味も込められたものだからである。

ブクレーエフ氏がマウント・マッドネス隊のスコット・フィッシャーに依頼されて隊に参加するまでの経緯、登山を開始してからのメンバーや他の隊の様子、遭難事故が発生してからのブクレーエフ氏の行動、その後のマスコミ対応やジョン・クラカワー氏との問題、翌年にエベレストへ戻ってスコットと難波さんの遺体を埋葬したときのことなどが詳細に語られている。

本来なら人間が生存不可能な環境下で起きた事故である。
ブクレーエフ氏のマウント・マッドネス隊もジョン・クラカワー氏のアドベンチャー・コンサルタンツ隊も、それらに参加した人のほとんどが遭難状態にあって、命からがらテントに戻って来た人には救助に行けるだけの体力は残っていなかった。
そんな中、唯一体力に余裕があるように思われたブクレーエフ氏はほかの助けを得られないままブリザードの中に救援に向かい、自分の隊の顧客の命を救う。
これは自分の命を危険に晒す行動であり、賞賛されるべきである。
スコット・フィッシャーとロブ・ホール、2つの隊のそれぞれの隊長であり実力のあった登山家二人が死に、ブクレーエフ氏は生き残った。
もしこの時ブクレーエフ氏も死んでいたならこれほど非難はされなかったのかもしれない。
彼が生き残ったことで非難の対象になったのなら、それはあまりにもひどい話だと思う。
彼が生き残れたのは、パニックに陥りそうな自分を冷静に抑えることができた強靭な精神力と、経験豊富な登山の知識があったからである。

事故の翌年、ブクレーエフ氏はエベレストに戻ってスコットと難波康子さんの遺体を埋葬する。
遺体の周辺に散らばっていた遺品を持って下山し、カトマンズで遺品を届けてくれそうな日本人を探す。
そこで偶然にも難波さんの夫・賢一さんと付き添いの貫田宗男さん(イッテQ登山部の隊長)と出会う。

さらにその翌年の1997年、ブクレーエフ氏はアンナプルナで雪崩遭難死する。

2015年12月23日

読書状況 読み終わった [2015年12月23日]

ピアノの調律師を目指す青年の物語。

叙景詩のような、言葉がきれいで静かな作品。
ピアノのことも調律師のこともほとんど知らないけど、音楽に疎くても十分楽しめた。
なりたいものを見つけてそれに向かってあがきながら進む主人公の姿が清々しい。

帯にも書かれている本文からの抜粋。

「才能があるから生きていくんじゃない。
そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。
あるのかないのかわからない、そんなものに振り回されるのはごめんだ。
もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」

あと
「才能がない、と諦めてしまうのは簡単だけど、簡単に諦めてしまいたくない」
というような内容の一文があってハッとした。
私には才能がないからと諦めかけていることがあるなぁと思い当たった。

2015年12月23日

読書状況 読み終わった [2015年12月23日]
カテゴリ 宮下奈都

1996年のエレベスト大量遭難で、一度は死んだものとしてブリザードの中に放置されたたものの、奇跡的に意識を取り戻して自力でキャンプまで戻り、見事に生還を果たしたベック・ウェザーズの著書。

遭難事故の記述は前半部分のみ。
大半は彼の半生記。

まだ遭難事故が起きるずっと前から、医者として成功し家族にも恵まれ、幸せそうな人生を送っているように見える彼だったが、実は重いうつ状態に悩まされて自殺さえ考える毎日だった。
そんな中で登山に出会い、取り憑かれたように山にのめり込んでいく。
家族はほったらかしで仕事とトレーニングと山登りに没頭するベック。
家族を顧みない夫に不満と怒りを溜め込んでいく妻のピーチ。
次第に家族との絆は切れつつあった。
妻・ピーチの我慢が限界になろうかというとき、あの遭難事故が起きる。

山にのめり込んでしまった男とその家族の人間ドラマが赤裸々に綴られた一冊。

2015年12月1日

読書状況 読み終わった [2015年12月1日]

1996年に起きたエベレストでの大量遭難。
アドベンチャー・コンサルタンツ遠征隊に参加し、その悲劇の只中から奇跡的に生還したジャーナリストのジョン・クラカワー氏による著作。
自身の記憶と、生き残った当事者たちや各所関係者への膨大な取材とをすり合わせて書かれている。

導入部分は過去にエベレストにアタックした名だたるクライマーたちの歴史に触れられていて、この山の特別さを読者に印象づける。

そのあと、氏がカトマンズ入りして遠征隊のほかのメンバーと出会うところから始まる。
メンバーたちに対する第一印象、村の雰囲気、ベースキャンプでの様子などが氏の感想と客観的な視点から書かれている。
そして、キャンプ1、キャンプ2と高度が上がるにつれて体調を崩す者が続出し、環境が少しずつ過酷になっていくさまが生々しい。

結末を知っているこちらとしては、次々と起きるトラブルが大量遭難の要因になることがわかるのだけれど、あのときその場にいた彼らは悲劇への階段を登っていることに気づかない。
決定的な何かが起きて状況が一変するわけではない。
たしかに、強烈なブリザードが大きな要因のひとつだけど、不穏な雲が次第に発生して嵐が来る予兆はあったのだから突然襲われたわけではない。

本書の中で氏が語っているが、あのくらいのブリザードはエベレストでは普通だし、登頂者の4人に1人が死亡するエベレストでこの年は7人に1人と少なかったくらいだと。

ではなぜ、ベテランガイドが自ら命を落とすような遭難事故になってしまったのか。
悲劇への糸が複雑に絡み合っていく様子が臨場感たっぷりで、読んでいて息苦しくなる。

地球のてっぺんであるあの場所は、生きて戻ることのほうが奇跡の、まさにデスゾーンなのだと思い知らされる。

「クライミングは素晴らしい行為だと、わたしは堅く信じているが、それは、危険を内包するにもかかわらずではなく、まさしくそれゆえに、なのだ。」

2015年11月24日

読書状況 読み終わった [2015年11月24日]

小さな頃から歌って踊ることが好きだった愛子は、アイドルグループの一員としてデビューを果たす。
握手会やライブやキャンペーン、夢だったアイドルになれた愛子は充実した日々を送っていたが、人気が出るにしたがって、そして、彼女自身が成長するにしたがって、彼女の心に少しずつ変化が起きていく。

アイドルの恋愛禁止、握手券つきCDに対する批判、テレビ番組に出たときの発言や演技についての賞賛と中傷。
さまざまな種類の言葉が、ネットなどを通じて十代の彼女たちに向けられる。
華やかなだけではない世界で生きるアイドルたちの心情が細やかに描かれている。

「人って、人の幸せな姿が見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」

「正しい選択なんてこの世にはない。たぶん、正しかった選択、しかないんだよ」

はっとする言葉が散りばめられていた。

2015年11月14日

読書状況 読み終わった [2015年11月14日]
カテゴリ 朝井リョウ

40代の佐知、佐知の母親の鶴代、居候の雪乃と多恵美は、鶴代の祖父が建てた古い洋館に住んでいる。
ひとつ屋根の下で暮らす四者四様の女たちの日常を描いた、ユーモラスで少しだけ侘びしさが漂うゆる~い物語。

私と同年代の佐知が抱える漠然とした不安や寂しさや、それとは裏腹の満足感などの混沌とした感情に激しく共感。
女同士のほどよい距離感にも共感できてほっこりする。

あまり気が合わない人(嫌いというほどではないけど、長時間過ごすと疲れるなぁと感じる人)との付き合いが年々煩わしくなってきた私に対する戒めや慰めの言葉が、物語の随所に散りばめられている。

2015年10月27日

読書状況 読み終わった [2015年10月27日]
カテゴリ 三浦しをん

職を失い妻子に逃げられホームレス寸前まで落ちぶれてしまったフリーライターのセキグチのもとに、元上司から連絡がくる。
NHK社屋でのテロ予告があり、その取材にセキグチが指名されているとのこと。
半信半疑でNHKに赴いたセキグチは、予告通りにテロに遭遇する。
老人たちのグループが画策していると思われるテロ。
その目的は何なのか?
自分の意志とは関係なく、セキグチはこの事件に巻き込まれていく。


面白い!
無差別に起きるテロに嫌悪感は感じるもの、昔から漠然と疑問に思っていた「テロと革命の違いってなんだろう?」というようなことを

改めて考えた。
現在の日本に漂う閉塞感のようなものを憂う老人たちの思いに共感できる部分は大いにある。

作中で老人の一人が言うセリフで印象的なものがあった。

「弱虫は老人にはなれないんだ。老いるということは、これが、それだけでタフだという証明なんだ」

あとがきで村上さんも、
「戦争を体験し、食糧難の時代を生き、殺されもせず、病死も自殺もせず、寝たきりにもならず生き延びるということ自体、すごいと思

う」
と書いている。

今老人と呼ばれる世代の人たちは、ただ息をしているだけでは生き残れなかった時代を生きてきたのだということを、村上さんが言うよ

うにすごいと思う。

そして、この物語の老人たちもものすごくタフで、行いの善悪は別にして、覚悟の強さが清々しい。

一方、主人公である50代のセキグチは、次々と起こる異常な状況の中で精神安定剤を多飲することでどうにか正気を保っているという

ような危うさがある。
セキグチと仕事をすることになった20代のマツノ君。
温和で人当たりがよく、草食系と言われるタイプの青年で、ITに強くて、大学でアルカイーダの組織論なども学んだ今どきの若者な彼は

、この事件に巻き込まれてしだいに精神を病んでいく。

タフな老人たちと軟弱な青年たち、過酷な時代を体験した世代と飢えや戦闘や死を観念でしか知らない世代を対比して描くことで、現代

日本の問題点や弱点が見える気がする。

2015年10月12日

読書状況 読み終わった [2015年10月12日]
カテゴリ 村上 龍

あらすじ(Amazonより)--------------------------
拡散すれば人々を大量死に陥れる威力をもつ生物兵器K-55が盗まれた!
引き換えに3億円を要求する犯人からの手がかりは、スキー場らしき場所で撮られた
テディベアの写真のみ。しかも犯人との交渉が突如不可能に!
圧倒的なスピード感で二転三転する事件のゆくえ、読者の予想を覆す衝撃の結末に酔いしれろ!

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深すぎず複雑すぎず、かといって単純でもなく、読者を裏切る東野ワールドもきちんと展開されていて、「東野さんは間違いないな」と改めて思った。
サラッと読めるのに物足りなさを感じさせない、「見始めたらついつい見ちゃう2時間ドラマ」みたいな気軽な作品。
サスペンスだけど、登場人物それぞれの思惑や心情が交錯して、人間ドラマとしても面白い。

2015年10月8日

読書状況 読み終わった [2015年10月8日]
カテゴリ 東野 圭吾

仕事や日々の生活でがむしゃらに頑張ってきた女性たちの目線で描かれた短編集。

肩肘張ってがむしゃらな彼女たちがふと挫折や虚しさを感じたとき、そんな彼女たちの肩にそっと手を置いて「少しお休みよ」と微笑みかけるような、ふんわりじんわりと優しい作品。
小難しさや理屈や説教臭さは一切なく、すっと直接心に響く柔らかい優しさ。
初めて読んだ作家さんだったけどぜひほかの作品も読んでみたい。

2015年9月17日

読書状況 読み終わった [2015年9月17日]
カテゴリ 原田マハ

あらすじ(Amazonより)------------------------------
寛政3年、改革令に触れて、版元の耕書堂蔦屋重三郎は手鎖50日、身代半減の刑を受けた。
それでも蔦屋は、幕府の倹約令に反旗を翻すように、多色の雲母摺りで歌舞伎役者の大首絵刊行を試みる。
絵師に選ばれたのが、東洲斎写楽。本業は能役者で斉藤十郎兵衛という男だった。大量出版のため、
助っ人に借り出されたのが、山東京伝と、のちの葛飾北斎と十返舎一九。
世間をあっと言わせようという蔦屋一世一代の大勝負だったが……。

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写楽の物語というよりは、蔦重や葛飾北斎や十返舎一九といった江戸の出版業界に関わった人たちの物語。

江戸の人たちの“乙”とか“粋”とかの独特の文化や考え方がかっこいい。
江戸の、華やかで平和で粋で乙な空気感が好きです。

山東京伝はわりと濃い目に描かれていたけど、北斎や一九の人物像ももうちょっと深く知りたかったな。

2015年9月17日

読書状況 読み終わった [2015年9月17日]
カテゴリ 宇江佐 真理

東日本大震災
釜ヶ崎
刑務所教誨師
伊豆大島土砂災害
広島原爆

災害、貧困、犯罪者、原爆。
理不尽な死や社会の隙間に落ち込んだ人々と真正面から向き合っている宗教者の方々。
被災地や紛争地帯、超貧困国でたくさんの取材をしてきた石井さん。
悲惨な現場の只中で現場の人たちに寄り添ってきた者同士の対談は、きれい事だけではない生々しさに溢れている。

宗教は時として弱った人の心につけ込むこともあるけど、寄り添う宗教は圧倒的に人の心を救うんだと思う。
だから、人間は太古の昔から祈りを捧げてきたんじゃないかな。

東日本大震災の片山さんのお話には、特に共感する部分がたくさんあった。

2015年9月11日

読書状況 読み終わった [2015年9月11日]
カテゴリ 石井光太

あらすじ(Amazonより)---------------------------
31歳の相馬克己は、交通事故で一度は脳死判定をされかかりながら命をとりとめ、他の入院患者から「奇跡の人」と呼ばれている。
しかし彼は事故以前の記憶を全く失っていた。
8年間のリハビリ生活を終えて退院し、亡き母の残した家にひとり帰った克己は、消えた過去を探す旅へと出る。
そこで待ち受けていたのは残酷な事実だったのだが…。

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真保さんといえばアクション・サスペンスのイメージだったけど、この作品は人間ドラマ・サスペンスといった感じ。

主人公が、失ってしまった過去を知りたいともがく様には共感したし、読者としての私も知りたくてのめり込んだけど、だんだんと執着が激しくなる主人公が狂気じみていて怖くなり、後半はイライラしてしまった。
主人公の執着に狂気を感じてしまうと、途中に挟まる母親の闘病日記も息子への執着が滲み出ている気がして、少し恐ろしく感じてしまった。

帯に「静かな感動を生む「自分探し」ミステリー」とあったけど、感動要素はほとんどなかったように思う。

2015年9月5日

読書状況 読み終わった [2015年9月5日]
カテゴリ 真保裕一

猟奇的な殺人事件が立て続けに発生。
サイバーパトロールをする民間会社でアルバイト中の大学生・幸太郎は、インターネット上に溢れる膨大な情報の中から犯人に繋がるネタを必死に探す。
そんな最中、幸太郎の周辺でも不穏な出来事が頻発し、元刑事・都築と出会う。

ファンタジー作品、『英雄の書』の続編。
続編というほど前作を引きずってはなく、『英雄の書』の世界観を引き継いだ別の物語。
『英雄の書』はがっつりファンタジーで、そしてそれが何かの二番煎じのように感じてしまって楽しめなかったけど、この作品は事件を解決するサスペンスの部分が充実していたので入り込めた。
サスペンスとファンタジーがちょうどよく融合していると思う。

人が発する“言葉”は知らず知らずのうちのその人の本質を形成する。
それは“業”のようなもの。-----
そんなことがテーマになった作品。

2015年8月31日

読書状況 読み終わった [2015年8月31日]
カテゴリ 宮部 みゆき

--下巻にて--

2015年8月31日

読書状況 読み終わった [2015年8月31日]
カテゴリ 宮部 みゆき

豊臣家滅亡を狙う徳川家康と存続を画策する豊臣家が戦う大阪冬の陣、夏の陣。
錯綜する周りの武将たちの思惑。
『決戦!関ヶ原』に続く、7人の作家による歴史アンソロジー第2弾。

歴史オンチの私にはこういう歴史物語はありがたい。
前作の『決戦!関ヶ原』では好感が持てた徳川家康も、豊富側から描かれると途端にイヤな奴になる。
視点が変わると、それぞれの思惑や立ち位置が変わって見えるのがこのシリーズの面白いところ。

2015年8月21日

読書状況 読み終わった [2015年8月21日]
カテゴリ 伊藤潤

帯より--------------------------

喪失と再生。これは人生の物語。


死は悲しむべきものじゃない---。
南の島の、その人は言った。


心を取り戻すために、
約束を果たすために、
逃げ出すために。
忘れられないあの日のために。
別れを受け止めるために。
「死」に打ちのめされた彼女たちが
秘密を抱えたまま辿り着いた場所は、
太平洋に浮かぶ島---。

-----------------------------------------------------------

阪神淡路大震災で被災した経験を持つ4人の女性の喪失と再生の物語。

湊さんの作品はえげつない絶望感に満ちたものしか読んだことなくて、今回もそんな作品なのかと思い手に取ってみたら全然違った。
絶望ややるせなさもあるけど、きちんと希望の光で満たしてくれる優しい作品。

湊さんは昔、海外青年協力隊で働いていたことがあったらしく、さらに淡路島に住んでいる(住んでいた?)ようなので、彼女の実体験が反映された作品なのかもしれない。
ノンフィクションに近いのかもと思ったら、読後は余計にグッとくる。

人はなかなかまっすぐ、真正直には生きられない。
間違いも犯す。
失敗もする。
悩みや後悔を抱える。
絶望したりもする。
そんなときに出会った人の言葉や行動で劇的に人生が変わったりもする。

絶望に囚われてしまった状態から抜け出すのは難しくて、もがけばもがくほど深みにはまってしまうけど、ひょんなきっかけで抜け出せたりする。

4人の女性の喪失と再生の様子と、彼女らを大きく包む人物の温かさに、読んでいる私も優しいものをもらった気がする。

2015年8月17日

読書状況 読み終わった [2015年8月17日]
カテゴリ 湊 かなえ

あらすじ(Amazonより)--------------------------

この状況で生き抜くか、もしくは、火星にでも行け。希望のない、二択だ。

密告、連行、苛烈な取り調べ。
暴走する公権力、逃げ場のない世界。
しかし、我々はこの社会で生きていくしかない。
孤独なヒーローに希望を託して――。

-----------------------------------------------------------

この作品の発売を知ったとき、このタイトルのポップさに早いうちの読みたいと期待に胸を膨らませたのだけど、いざ読み始めたら、怒りを感じるほどに暴力的で、精神的に残虐な描写が多くて読み進めるのが辛かった。
その理不尽な暴力は作品の肝であるから、著者は意図してより残虐に描いたのだろうし、私はその思惑にまんまと嵌ったのだと思う。

物語はより良い方向に進むのだと思いたいけど、残酷さの余韻がすごくて読後も全然すっきりしなかった。

2015年8月4日

読書状況 読み終わった [2015年8月4日]
カテゴリ 伊坂 幸太郎

衣笠幸夫は、自分の名前が野球選手のカープの鉄人・衣笠祥雄と同じ読みであることを忌み嫌い、そんな名前をつけた父親のことも恨みに近い感情で嫌っていた。
そんな彼が小説家を目指すのは、ペンネームという新たな名前を手に入れ、忌み嫌っている本名を封印するためでもあった。

主人公・幸夫の歪みっぷりというか、欠落ぶりがすごい。
その卑屈さにイライラすることもあるんだけど、不思議と嫌いにはなれない。
彼の人生や考え方を変えるある決定的な出来事はかなり重めで悲惨だけど、それからの方が明るめで希望的で、時々ユーモラスで、だけど、それもなんだか危うくて、そういう不安定さにハラハラしながらも最後まで惹き込まれた。

夫婦とかの親しい人間関係が、「嫌いになった」とかの決定的な理由ではなくて親しいがゆえにこじれていく様子が生々しくて、主人公が歪んでいるからリアルに描かれている。
こういうきれい事じゃない作品はグッとくる。

2015年8月4日

読書状況 読み終わった [2015年8月4日]
カテゴリ 西川美和

「国家主義カースト制」によって超管理国家となった2075年の日本国・東京。
得Aランクの斎藤総一郎は、先祖の代から住んでいる家の立ち退きを迫られていた。
最上ランクの国民でありながら次々襲い来る理不尽な出来事。
家長・総一郎のプライドがズタボロになったとき、彼は大きな決断をする。

タイトルと装丁に惹かれて読んでみた。

まず、人権を無視したような超管理主義や効率至上主義のこの世界が、なんだかリアリティーに欠けていて物語に入り込めなかった。
奇想天外でありえないような世界観の物語は大好きだけど、その世界観を成立させるには説得力が必要で、その説得力が弱さからか突拍子もない奇抜さだけを感じてしまった。

あと、総一郎が意地と勢いだけで突き進んでしまう様子が、状況はシリアスなのに滑稽で、だけど滑稽なのにコミカルではないのでなんかモヤモヤっとした。
自分の感情がシリアスにもコミカルにも着地できなくて、終始宙ぶらりんのままで、だから読み終えてもすっきりしなかった。

もうひとつ、総一朗が男としても夫としても父親としても自分勝手で周りの気持ちを汲む繊細さに欠けていて、そんなこの人を好きになれなかった。

2015年7月30日

読書状況 読み終わった [2015年7月30日]
カテゴリ 篠田節子

元交際相手の家に放火し、妻と幼い子どもを殺害した罪で死刑が確定した田中幸乃。
センセーショナルなこの事件をマスコミは大々的に取り上げ、「鬼畜なストーカー女」として生い立ちから赤裸々に報道される。
この死刑囚はどういう人物で、この事件の背景に何があったのか?
彼女と関わりのあった何人かの人物の目線で描かれる物語。

司書さんに「オススメの一冊はないですか?」と尋ねて借りた作品。
止め時がわからずに、一晩で一気読みしてしまった。
展開が読めそうで読めない。
最後の最後まで気が抜けない。

幸乃にとってハッピーエンドだったのかバッドエンドだったのか、私にはわからなくて結末に呆然とするばかり。
やるせないとかせつないとか憤りとか、そういうのが絡み合った感情を投げつけられてしまうので、受け取った読者が自分の納得できる場所に収めるしかない。
そんな作品。

2015年7月13日

読書状況 読み終わった [2015年7月13日]
カテゴリ 早見和真

-----内容紹介(Amazonより)-----

慶長五年九月十五日(一六〇〇年十月二十一日)。
天下分け目の大戦――関ヶ原の戦いが勃発。

――なぜ、勝てたのか――
東軍
伊東潤(徳川家康)
天野純希(織田有楽斎)
吉川永青(可児才蔵)

――負ける戦だったのか――
西軍
葉室麟(石田三成)
上田秀人(宇喜多秀家)
矢野隆(島津義弘)

――そして、両軍の運命を握る男――
冲方丁(小早川秀秋)

当代の人気作家7人が参陣。
日本史上最大の決戦を、男たちが熱く描いた「競作長編」。

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上の内容紹介にもあるように、天下分け目の関が原の戦いを、参戦した7人の武将の目線で7人の作家が描いたオムニバス形式の長編作品。
それぞれの武将にそれぞれの思惑や決意があって、迷いや躊躇もあったりして、それらが複雑に交錯してひとつの結果に進んでいくのが面白い。

中高生のときに薄っぺらく学んだ歴史の奥のほうで、こんなにドラマチックなことが起こってたんだな。
これだから時代小説はいい。

島津義弘の章、可児才蔵の章、小早川秀秋の章が、私は特に好きだった。

2015年7月13日

読書状況 読み終わった [2015年7月13日]
カテゴリ 伊藤潤

--あらすじ(文庫本の背表紙より)--
奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。
無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。
日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。
そして、ヘリの燃料が尽きるとき…。

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何を借りようかと図書館をウロウロしたら、表紙にヘリコプターの絵が書かれていたので借りてみた。
航空自衛隊が出てくるかな~と思って。
読了後にネットで検索してみたら9月に映画が公開されるよう。
だからオススメコーナーにあったのか。

さて、感想。

素晴らしいエンターテイメント・サスペンス作品!
映画化されるのもわかる!
映像化したくなる作品。
場面展開や情景描写がとても映像的で、映画を見ているように物語が進んでいく。

原発を狙ったテロが発生するという物語なんだけど、注目すべきは、この作品が1995年の書かれているということだと思う。
福島原発の事故よりも東海村の事故よりも前に、「原発をテロのターゲットにしよう」と発想したのがすごい。
そしてその内容も、原発が危険か安全かとか、必要か不要かとか、そういうことが論点じゃないところも素晴らしいし面白い。

私の家の近くには原発はないせいもあって、福島原発の事故が起きるまで原発について考えたこともなかった。
そんな私(と私のような人)に向けての作品なんだと思う。
原発だけじゃなく、「私にはあまり関係ない」と無関心でいることに対して警鐘を鳴らす作品。
東野さんのそんなメッセージも込められているけど、エンタメとして傑作なので気負わずに楽しめる。

原発やヘリの構造とか仕組みについての描写が詳細で、パソコンを駆使しての遠隔操作とかにも詳しくて、そういうハイテク感が満載なので古臭さは一切感じない。
時代を感じるのは、捜査員が連絡のときに携帯電話ではなくてポケベルを使っているくらい。
そんな時代にこれを書いた東野圭吾さんは、やはり天才だと思う。

期待していた空自もちょっと出た。
メディックとか♪
そこの場面もカッコイイ。

2015年7月9日

読書状況 読み終わった [2015年7月9日]
カテゴリ 東野 圭吾
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