光圀伝

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レビュー : 535
著者 :
NAEさん 冲方 丁   読み終わった 

水戸光圀をきちんと描いた作品に触れたのは初めてで、ドラマ時代劇の“黄門様”のモデルになった人、くらいの乏しい知識しかなかった。
作中でも“虎”と比喩されるくらい猛々しい人だったと知って驚いた。

前作の『天地明察』は一生をかけて暦を作り上げた人の話だったけど、今作は、一生をかけて歴史書を作ろうとした人の物語。
作品の冒頭部分で光圀が殺したのは誰だったのか、というミステリー要素をスパイスのように効かせながら、水戸光圀の幼少から死ぬまでを描いた、大河ドラマのような一冊。

徳川御三家のひとつに生まれた光圀は、戦国から泰平の世へ移り変わった直後の時代の中で、客観的に俯瞰で書かれた歴史書の必要性を感じ始める。
これまでは、為政者が作った為政者に都合のよい歴史書しかなかった。
それでは、数多の先人の考えや行いが“無”になってしまう。
「人の世は常に繋がっており、先人の成したことが地続きとなって今の世があり、この時代もまた、脈々と後世へと繋がっていく」
光圀が人の生き死にに直面するたびにその思いは強くなっていく。
こうして彼が着手した歴史書の編纂は、彼の意思を受け継ぐ者に引き継がれ、明治時代に完成する。
まさに彼が感じたとおり、思いは脈々と後世へと繋がっていったのだ。

『天地明察』でこの著者のファンになったので読んでみたわけだけど、大正解だった。
かなりの厚みがある本だし、冒頭がいきなり古語だったから「難解か…?」と思ったけど、そんなこと全然なくてグイグイ引き込まれた。
途中で出てくる論語だとか漢文だとかもちょっと苦手だったけど、それを凌駕する面白さだった。
子供の光圀が、父親や周りの大人たちに訓練され、また、一流の人物との出会いや貴重な体験を通して成長する少年期・青年期はの勢いが気持ちいい。

歴史上の人物って、空想の人物みたいにリアリティーがない存在じゃない?
本の中、テレビの中の人であって、私という現実社会で生きている人間とは無関係な存在のように感じてしまう。
だけど、この作品を読み進めるうちに、「ああ、こうやって泣いたり笑ったりしながら、私と同じ時間軸の線の上で生きていた人なんだなぁ」って、光圀という人をリアルに感じた。
この人の人生も、私の認知してない部分で私の生活と繋がっているんだろうなって。
そして、光圀にとっての未来を、私たちは過去の歴史として知っているというのが、当たり前なんだけど、なんか不思議な、妙な感覚に囚われた。

レビュー投稿日
2013年5月9日
読了日
2013年5月9日
本棚登録日
2013年5月9日
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