明治の文化 (同時代ライブラリー 307)

著者 :
  • 岩波書店 (1997年6月16日発売)
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近代日本こそがアジアの平和──安重根の言う「東洋平和」──を壊した、いや壊し続けているうえに、それに対する責任がしかと引き受けられていないという苦い洞察にもとづきながら、それを可能にした「精神構造としての天皇制」を、明治期におけるその起源にまで遡って見通そうとすると同時に、その起源から聞こえてくる声なき民衆の声を拾い上げ、明治初期の民衆の精神が、その共同性、ないしはそこにある相互扶助の倫理などにもとづいて、人間の解放、そして「自由民権」の獲得へ向かいえたという民衆史の両義性をも浮き彫りにする色川民衆史の代表作。さらに、そこに関わって「西洋」の法論などを翻訳し、翻案した知性には、今の知性にはないしなやかさがあったことが指摘されている点も重要。「民衆」への深い信頼にもとづいて、「精神構造としての天皇制」を内側から解体するための橋頭堡を築こうとする労作と言えよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2013年6月12日
読了日 : 2013年5月1日
本棚登録日 : 2013年5月1日

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