八本脚の蝶 (河出文庫)

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本棚登録 : 397
レビュー : 25
著者 :
むすびさん エッセイ   読み終わった 

祝文庫化。ハードカバーが出た時はタイトルに惹かれつつなんとなく見送った。古書価が高騰していたとは知らなかった。
ハードカバーはポプラ社だったのね。なぜ文庫版は河出書房新社なんだろう。

概要は文庫版が出てようやくチェックして知ったくらいだから、色々衝撃的だった。まずWEB上の日記が本になっているという事実。今もサイトは残っているのだからオリジナルは読めるのに、こうしてまとめられて本になっていると、ある種異様な存在感を覚えてしまう。印税は遺族にいくのかなとか、出版社の枠はURLより硬く苦しい気がするなとか、読んでいてちょっと後ろめたい気持ちもある。日記の主が自分と同じ時代に実在しただけになおさら。
総じて、純粋で、真剣に生きていた人だったんだなという認識。豊かな感受性、指向性の精神と行動力がうかがえる趣味嗜好、「物欲乙女」の足跡と読書遍歴が眩しく、魂の悲哀は高く澄んで明るい。当人を知らない身からすると、一番近い感慨は中野翠のそれなのだけど。
目を閉じるということが下手な人だったのかもしれない。自分が自分を見る目さえ、悪意ある人に歪められたものかもしれないのに。

「記憶――あの日、彼女と」と合わせるとまた別の面白さがある。彼らが会って読んだ生身の著者。回顧録よりむしろ怪談のような。日記ではまるで風景の中に著者ひとりがぽつんといるような感じだったのが、実際には恋人との(もしかしたら賑やかな)道行きだったとわかったり。

レビュー投稿日
2020年5月16日
読了日
2020年5月12日
本棚登録日
2020年5月16日
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