『魔法: その歴史と正体』を読んだ流れで読んでみたかった。満足。
青弓社ルネサンスはこれが初めてなのだけど、「ルネサンス」にふさわしい一冊な気がする。他のタイトルも気になる。
154頁「眉かくしの雲」に脱力。それ雲じゃなくて霊……。
文明開化期、西洋から科学を取り入れることによって急速に進んだ近代化。それを契機に生じる「精神」への傾倒、現代のオカルティズムにも繋がる「物質」と「精神」の捻じれを照らし出す試み。
日本の近代化の流れ、科学の直輸入元の西洋の歩みについて、焦点を絞りつつ詳しく述べられていて読み応えがある。こっくりさんと千里眼はそれぞれ大きく扱われているけど、そのものというより、そこに照射される「精神」指向を探る内容なので、端からオカルト傾倒(肯定ないし否定をする立場)の意識で読むと当てが外れるかもしれない。特に「千里眼」のほうは「千里眼事件」という触れ込みがあるから、ついミステリのように答えを求めてしまいたくもなるのだけど、この本としてそれは別の話。
著者の本領は文学、文化史とのことで、著名な作家やその著作を取り上げているところがとても嬉しい。作品発表の背景まで踏まえた真面目な読み方はあまりしたことがなかっただけに、この心霊学興隆の観点はぜひ覚えておきたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
オカルト
- 感想投稿日 : 2021年3月14日
- 読了日 : 2021年2月28日
- 本棚登録日 : 2021年3月14日
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