郊外の文学誌 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2012年1月18日発売)
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本棚登録 : 40
感想 : 5
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●:引用
●本書の「郊外」とは、荷風のいう「郊外」とは違って、この震災以後の西への発展によって生まれた「ええ郊外住宅地」のことをさしている。まだ雑木林や麦畑が少し残っている。そこに和洋折衷の文化住宅が建てられてゆく。市中の会社へ電車によって通勤してゆく会社員の家族が移り住む。石井桃子の童話「ノンちゃん雲に乗る」や島津保次郎監督の映画「隣の八重ちゃん」などで描かれた小市民の平穏な暮らしが生まれていく。それは昭和の戦争の時代が始まる前に生まれた、奇跡のような「一瞬の郊外のユートピア」だった。戦争によってまたたくまに失われてしまうが、郊外はつかのまの平和があった。本書は、この震災後の郊外住宅地にわずかな期間に生まれた「郊外の平穏」を、主として文学作品を通して記述したものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2012年に読んだ本
感想投稿日 : 2012年12月25日
読了日 : 2012年11月19日
本棚登録日 : 2012年12月25日

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