外国人が見た日本-「誤解」と「再発見」の観光150年史 (中公新書)

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レビュー : 19
著者 :
わっさんさん 2019年に読んだ本   読み終わった 

●→引用

●当時の西欧人には、前記のように自分たちの「伝統を擁護」しなくてはならない理由があった。いっぽうで日本人には、外国と対等にわたりあうため富国強兵を推し進め、封建時代からの「伝統を壊す」必要があった。その相違がぶつかりあった時代での見解の相違である。このことは、外国人と日本人との間で、日本の魅力に対する感じ方、ギャップの根深さを浮かび上がらせているように思える。
●現在書店に並ぶ旅行ガイドブックはどこへ行ったらいいか、何を食べたらいいかを教えてくれるハウ・トウー本の領域にとどまっている。その土地の歴史、文化、自然地理、芸術、文学、動植物といった教養に属する記述はほとんどない。あってもほんの数行程度である。昭和の末ごろまでは国内の旅行ガイドブックなら、地元の郷土歴史家や地方紙の文化面担当者、高校の教師や大学教授が著者となり、見どころの歴史などを案内していた。外国旅行のものならその道の権威筋といった大学教授などが著者として名を連ねていた。これらは明治時代以来の旅行案内書の特徴、さらにいえば欧米の出版社による旅行案内書の伝統を引き継いだものだった。
●西欧人と日本人との大きな相違の一つは、身近な日常の中に宗教が根付いているか否かではないだろうか。西欧人の多くは、日常生活の中で祈りを捧げることのほか、旅先でも教会などでは親が小さな子に壁画を指さしながら「これがペテロで、あっちがパウロで・・・」などと絵の中の話を説明している光景をよく見かける。普段絵本で読み聞かせている聖書の中の話を、出かけた先の教会でも自然にしている。旅先でも宗教が離れずにある。日本人の場合、宗教が生活の中に入っておらず、お寺との関りをもつのは法事のときくらい、という人が多い。旅と関連した庶民の間の宗教的行為といえばお伊勢参りがあるが、それも盛んに行われた時期とそうでない時期があり、旅と宗教的行為との関係は比較的薄い。
●政府が国内力制限を全面撤廃しなっかた最大の理由は、条約改正において格好の交渉道具と考えていたためである。よく知られているように、幕府が欧米諸国と結んだ不平等条約を改正することは、明治政府にとっての最重要課題だった。
●中国人へは、日本の伝統的見どころを見せても、かえって歴史が浅いと見下されてしまう。中国人へは近代的姿を見せただけである。韓国人へは、近代的側面と歴史的側面、その両方を見せた。(略)同じ東洋でも国や地域により日本が見せたいものは異なった。明治前半、外国人の遊歩区域規定が条約改正の条件闘争に利用されたように、この時代の観光には、対米感情やアジアの覇権に絡んで政治、外交の要素が色濃く入り込んでいた。
●明治時代以来、日本は、欧米観光客からのフジヤマ、ゲイシャといったオリエンタルなまなざしを甘受し、それを宣伝してきた。いっぽう東洋からの旅行者には近代化した日本を見せようとした。しあしそれは西洋からは近代化を被った「偽者の東洋」として見られ、東洋や南洋からは「西洋文化を模倣した偽者」として見られてしまう危険性をはらんでいた。このジレンマに気づいた小山栄三らは、大東亜共栄圏の人間に対して、日本の科学的産業的施設を見せるのにとどまらず、「皇道精神」といった日本民族の精神的崇高性を理解させるべきだと主張した。”皇道精神”を啓蒙することこそが、ジレンマに囚われることのない大東亜共栄圏の観光宣伝の帰着点としたわけである。
●観光国の条件としては、「気候と治安のよさ」を前提として、「文化、自然、食」の魅力が高いことが重要といわれる。ハワイはそれらを満たしている。日本も治安は合格、気候も四季おりおりで合格、アンケート結果では食の評価も高い。文化や歴史の魅力も備えているとしたら、残るのは自然である。だが、日本人は自国の自然を過小評価し、魅力を活かしきっていない。(略)本書で多数の例を述べてきたように、日本の文化や歴史に関心をもち日本にやってきた人たちも、日本各地の自然に魅せられた。日本の自然に魅力がなかったら、彼らの多くは日本滞在の年月をずっと減らしてのではないかとさえ思える。文化や歴史に興味があっても息抜きが必要で、自然の中に身をおきたくなる。日本にはそうした自然も多種多様にあり、それらとセットになればリピーターも増えていく。

レビュー投稿日
2020年2月22日
読了日
2019年4月9日
本棚登録日
2020年2月22日
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