チャンス」 太宰 治
「人生はチャンスだ。結婚もチャンスだ。恋愛もチャンスだ。と、したり顔して教える苦労人が多いけれども、私は、そうでないと思う。」「少くとも恋愛は、チャンスでないと思う。私はそれを、意志だと思う。」という印象的な書き出しで始まるのは、太宰治によって書かれたチャンスという「恋愛」について述べたとされる随筆だ。
太宰治は、波乱万丈な生涯を歩んでおりそんな生涯におけるプライドとコンプレックスの葛藤から生み出した自伝的作品といわれる「富嶽百景」、「人間失格」や物語的作品である「お伽草子」、「走れメロス」 で知られている。入水自殺によって亡くなるまでのわずか39年の人生において挫折や苦難を味わう度に自殺を試みたことでも知られているが、そんな彼のかくチャンスという題名の作品に惹かれたのだ。
小説と違って随筆なので説明をするのは難しい、というより内容を話してしまうと想像の余地もなくこの後読む人がつまらなくなってしまうので書けない。内容としては、ただひたすらに太宰治の思う恋愛の定義や思うところがあればそれについて語るものだ。随所に自身の体験などが入れられていて、思わずくすっと笑ってしまう部分もあるだろう。
これを読むにつれ共感する人もいればモヤモヤとした気持ちを抱える人もいるかもしれないが、どの立場の人も一読してみてほしい。読み終えたときと読みはじめではきっと抱く感想は変わってくるはずだ。そして最後に書かれた庭訓が、私たちの背中をそっと押してくれるはずだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年10月16日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2019年10月16日
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