エネルギー(上) (講談社文庫)

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本棚登録 : 380
レビュー : 33
著者 :
wavesさん 経済一般   読み終わった 

黒木さんの小説は細部まで徹底的に描写される。シンガポールでもロンドンでもパレルモでも。街並みや街路のたたずまいだけでなく主人公たちが大事な河井をかわすレストラン、バー、ホテルまで。改めて取材に行ったのかもしれないが、商社マンとして訪れた街のレストランをここまで描きこんでいるとしたら、相当な執着心だ。

そこまでこだわる黒木さんだから、ストーリーも徹底的に面白い。エネルギーやファイナンスにまつわる専門的な話も出てくるが、一定のリズムで読み進めさせてくれる。環境NGOのプレゼンテーションですらも見てきたように克明に描き出す熱意はどこから生まれてくるのだろう。物語は商社マン二人とエネルギーデリバティブディーラーが織りなす10年にも渡る群像劇。3人は決して予定調和的に交わることはない。

2006年、シェル石油や三井物産が進めていた石油・LNGプロジェクト「サハリン2」は、ロシアプーチン政権の圧力に屈し、ガスプロムに株式の過半数を譲渡することに合意した。

同じ2006年、国際石油開発はイランへの制裁姿勢を強める米国の要求を受け入れ、アザデガン油田の参加権益の65%とオペレータシップをイラン企業に譲渡した。

個々の報道はそれだけ見ていれば日本のエネルギー調達が断たれたたかのような悲観的な印象を受ける。しかしそれぞれに背景があり、重ねられてきた交渉史があり、時代に応じた思惑の変化がある。結局のところサハリン2のLNGは日本に輸出されており、原発が止まった日本のエネルギーはLNGが支えている訳で、商社マンたちが重ねてきた歴史は決して無駄ではなかったことがわかる。

レビュー投稿日
2013年7月27日
読了日
2013年7月23日
本棚登録日
2013年7月23日
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