文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

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本棚登録 : 6819
レビュー : 564
著者 :
ウエッチさん 日本現代小説   読み終わった 

「フロイト、勉強してみるか」

<マイ五ツ星>
復活:★★★★★

<あらすじ>-ウラ表紙より
夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?
著者会心のシリーズ第三弾。

<お気に入り>
砂浜が見えた。
海は紺碧かった。
「夢だったようだ」
関口が云う。同感である。何もかも、夢のようだ。
千五百年の夢。五百年の夢。前世の夢に現世の夢。
骨を巡る沢山の夢ばかりが繋がって、狂想曲を奏でていたようだ。
「狂骨の-夢だな」

<寸評>
京極堂シリーズ第三弾。
今回の舞台は鎌倉から少し海寄りの、海岸の町・逗子。
夢か現か、自分の前夫を複数回殺した記憶を持つ女「朱美」。彼女が基督教会に救いを求めに訪れる一方で、彼女の主人・宇田川は同業者である文士・関口に相談を持ち掛ける。
死者は本当に蘇るのか?

フロイトの影に脅える牧師見習い・降旗と文士・関口、そして刑事・木場がそれぞれ異なるアプローチで事件に迫り、探偵・榎木津も腰を上げる。
それにしても……、
今作では前作にもまして「待たされた」。
第4章にて前作のある人物の葬式を簡単に終えた京極堂は、目当ての本を買いに京都に行ってしまう。次に京極堂が登場するのはなんと第10章、594ページからである。案の定というか、京極堂不在の中繰り広げられる謎解きは、収拾がつかなくなる。

「僕には解ったね」
 (中略)
「その死人は双子だったのだ」
榎木津は決然とそう云った。
木場は答える気にもならなかったが、関口が怠そうな声で答えた。律儀なことである。
「待ってくれよ榎さん。どうしてそうなるんだ?」
「だって君、同じ顔の男が二人いるんだぞ。ひとり死んだってまだひとり生きている」
「榎さん、この手の話に双子は拙い」
 (中略)
「駄目ですよ。榎木津さん。そのご亭主はもう四回も殺されているんです。だから三回は生き返っている訳ですから」
「じゃあ四つ子」

……今回の榎木津は、完全にギャグ専門である。場をまとめる京極堂がいないので、引っ掻き回し放題だ(笑)。
そのぶん、京極堂登場後は、またもや鮮やかに事件が収束してゆく。

追記として、昭和初期の新興宗教弾圧のくだりで「『ひとのみち』の御木」が出てきたのは驚いた。何を隠そう、この『ひとのみち』とは、我が母校PL学園の宗教母体・PL教団の前身である。山川の日本史用語集でもレベル1かそこらだったと思うが…よく知っているものだ。

レビュー投稿日
2012年6月28日
読了日
2009年11月14日
本棚登録日
2012年6月28日
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