心的外傷と回復 〈増補版〉

  • みすず書房 (1999年11月26日発売)
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感想 : 28
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PTSDについて過不足無く纏めている。被害者への寄り添い方と客観のバランスがとても適切と思ったら、やはり著者は女性だった。
勉強になったのは以下。

・心的外傷は被害者から力と自己統御(セルフ・コントロール)を奪う。治療の基本原則はそれを被害者に奪回する事にあるが、その為に最初の課題は安全確保である。安全が十分確保いないのに治療が成功する事はありえない。

・家庭内暴力にあってパートナー双方が共に和解を願っても内心の目標ははっきり食い違う事が少なくない。虐待者は通常相手を強制的にコントロールするという関係を取り戻したいと思っており、被害者はそれに抵抗したいと思っている。虐待者が暴力を振るわないと誓う事は良くあるが、大抵裏の条件があって、暴力を振るわない事を誓う代わりに被害者に自己決定権を放棄してほしいというのである。

・絶望との対決ともに、少なくとも一過性に自殺の危険が増大する。患者な自分には自殺を選ぶ権利があるという不毛な哲学的議論を始めるかもしれない。絶対にこの知的防御の向こう側に出て、患者の絶望の火に油を注いでいる感情や空想にかかわるようにしなければならない。よくあるのは、自分はすでに死者であるという空想である。それは愛の能力が破壊されたからだというのである。この絶望の底に降りていく過程で患者を支えとおすものは、どんなにささやかでもよい、愛による結びつきの力が残っているという小さな証である。

・心的外傷の核心は孤立(アイソレーション)と無縁(ヘルプレスネス)である。回復体験の核心は有力化(エンパワメント)と再結合(リコネクション)である。回復の第三段階になると、外傷を被った人も自分が被害者であったことを認識し、自分が被害者となっていたための後遺症がどういうものであるかを理解するようになる。これは外傷体験の教訓を人生に組み込む準備ができたことである。自分の力量感、自己統御感を大きくし、これからもあるであろう危険に対して自らを守り、そして信頼できるとわかった人々との同盟関係を深める準備ができたことでもある。児童期の性的虐待の生存者の一人はこの段階に達した感じをこう記している。
「私は決めた、そうだ、私を白眼視している奴らを皆メタメタにやっつけてやりたいと同じ事ばかり考えていたが、もうたくさんだ。もうそう思う必要は無いんだと。それから考えた。じゃあ、どう感じればいいんだろう、と。私は世界の中にいても安全だと感じたかった。私には力があるんだと感じたかった。そこで私の人生の現在活動しているものに心の焦点を合わせて、現実生活の場で力を持とうとした。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理・カウンセリング ☆4,5
感想投稿日 : 2011年11月7日
読了日 : 2011年11月7日
本棚登録日 : 2011年11月7日

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