・おれは…自分の運命を呪ったことはない。
嘆いたことも、恐れたこともない。
甘受しなければならない運命なら、
ただ静かにそれを受け入れるしかないと、ずっと、そう思ってきた。
だからおれは、不幸とは無縁だった
だが不幸と無縁ということは、幸福とも無縁ということだ。おれは一切と無縁だった、幸も不幸も、善も悪も、愛も憎悪も。そうしなければ正気を保てなかった。
天地は限りなく美しく厳しく、おれはそこにただ在るだけで、それだけで良かった。
だがこうして櫛を作っていると、これを手渡せない自分が、無性に哀しかった、哀しいと、はじめて思った。
哀しい分だけ、哀しみの深さの分だけ、おれは幸福なのかもしれないと、思った。
・風になれたらいいのに、そうしたらいつでも見ていられる。空の高みから、梢の陰から。そうして時々髪を散らして困らすの。
・偶然より運命ははるかに強い。
・水は流れて水となり、風は吹いて風となる。そして、人はゆらいで人となる…。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説・マンガ(含☆4,5)
- 感想投稿日 : 2014年6月18日
- 読了日 : 2014年6月18日
- 本棚登録日 : 2014年6月18日
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