コロナウイルス感染拡大の影響で、相当な被害を被った業界の1つが観光業だ。何しろ人の動きが制限されてしまい、旅行どころではなくなったのだから。
そんな中で、団体旅行という1つの文化に焦点を当てた今回の本は、旅が人々や社会に与えた影響について知ることができる。
江戸時代のお伊勢参りに始まり、富士参拝、鉄道の出現による旅行のあり方の変化、修学旅行、戦後の海外旅行や新婚旅行、若い女性の旅行への興味などさまざまな視点から旅について取り上げている。
意外だと思ったのは、終戦からわずか1年で修学旅行が再開したことだ。1946年に山口県立厚狭高等女学校が3泊4日で松江・大社方面へ、そして群馬県立高崎商業学校が1泊2日で日光方面へ、米持参で修学旅行を実施した記録があった。
著者は「人間の成長過程において必要な心身鍛錬のひとつであり、遊びとは一線を画するものであるとの認識が持たれていたからであろう」と推察している。
なお、戦前に関しては、1944年3月に決戦非常措置要綱に基づいて、旅行の制限が閣議決定された。遊楽や物資買い出しなどの不要不急の旅行が禁止された。しかし、4月1日の施行を目前にして旅行者が急増した。
当時の人々が戦時中の困難な時代であっても可能な範囲で楽しみを見出しているたくましい姿をかいま見ることができるなあ。
旅は日頃のストレスをいやすいい機会、心のインフラだ。コロナウイルスに感染しないようにできることをやって、旅をして心身ともにリフレッシュしないと今の時代を生き抜いていけないからなあ。
- 感想投稿日 : 2022年1月26日
- 読了日 : 2022年1月26日
- 本棚登録日 : 2022年1月26日
みんなの感想をみる