なぜか知らないが興味を持ってしまうことの1つがオカルトだ。
著者によると、「霊」を呼び起こしているのは、「近代」という制度の弊害である。西洋思想が明治時代に入るまでは、「霊」は日本民族の土台としたのが柳田国男だった。
現代の「科学」に重きをおく世界と、「霊」の存在を疑わなかった時代とでは、越えられない壁がある。
いつから「こっくりさん」が始まったのか気になるが、諸説ある。その中でもよく知られているのが明治の妖怪博士と呼ばれた井上円了の説明だった。
1884年頃、伊豆下田沖で難破したアメリカの帆船乗組員が、下田にいる間に人々に伝えた。下田にいた各地の漁師たちが、この遊びを広めた。
こっくりさんの弊害がマスコミで騒がれるようになったのは、1970年代以降になる。空前のオカルトだブームで、五島勉「ノストラダムスの予言」や小松左京「日本沈没」がベズトセラーになった。そんな中でこっくりさんも小・中学生を中心に大ブームになった。
1980年代になると少女たちがこっくりさんに関心を持つ。その担い手となったのが、美堀真利「コックリさんの不思議」や、「ハロウィーン」などのオカルト雑誌の創刊ラッシュだ。
著者いわく、おどろおどろしい恐怖のイメージは脱色される。誰にでもできる不思議な体験が少女たちのツボにはまったようだ。
著者の一柳廣考(いちやなぎひろたか)は、日本近現代文学・文化史が専門だ。大学院生だったときに、ある先生が「最初の著作には気をつけなさい。一生縛られるから」と話していたことを覚えていたと述べている。
まさにその通りになっていた。
歴史の教科書には登場しない世界なので貴重な資料だ。
- 感想投稿日 : 2021年5月22日
- 読了日 : 2021年5月22日
- 本棚登録日 : 2021年5月22日
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