あの『アルケミスト』のコエーリョが?と、ずっと気になっていた本は、その名も『不倫』。
出版当初に賛否両論の的となったこのタイトルから、内容も大きく外れはしない。
しかし、主題は恋愛などではない。
曰く「世界でも有数の安全な国」に暮らすリンダは、ジャーナリストとして有力新聞社に所属。
聡明な彼女には二人の子供と、国内でも指折りの資産家である夫が居る。
夫は結婚から十年が経過した今でもリンダを情熱的に愛しており、二人は常に世間の羨望を集めていた。
しかしリンダは、とあるインタビュイー(解説によるとコエーリョ自身が投影されている)の一言から、現状を疑問視し始める。
日々、増していく倦怠感。
そんな折に再会したティーン時代の恋人は、彼女の衝動を刺激してー。
女性特有の閉塞感が描かれた本作には、同性として、先行きの微かな不安を見出してしまう。
一見『アルケミスト』と掛け離れている様に思えて、随所に散りばめられたメタファーは共通していた。
スピリチュアルな要素も又、然り。
一つの不倫のドラマは終わりを迎えたが、そこから尚、彼女の問わず語りは続く。
それは決して終焉ではなく、確かに拓かれた末に幕を閉じた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2023年3月26日
- 読了日 : 2023年3月26日
- 本棚登録日 : 2022年11月10日
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