あらくれ (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (2006年7月11日発売)
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感想 : 14

古井由吉さんの自選全集が出た記念に、古井さんが好きな本が取り上げられていた。漱石、鴎外やギリシア悲劇のような古典中の古典ばかりが並ぶ中で、徳田秋声の「あらくれ」と「黴」が取り上げられていた。正宗白鳥あたりまでなら読んだ記憶があるが、徳田秋声は初めて。

もともと新聞小説だったからか、章がかなり細かく切ってある。で、なんとなくゆっくり話が進むのかと思いきや速い速い。「お島待ってくれ」と言いたくなる。これだけ怒涛の展開なら連続テレビ小説とかにできるんじゃないか。

主人公のお島が男嫌いで結婚するよりも、男まさりに働くのが好きという話なのだけれど、お島がとにかくパワフル。後ろの表紙に「日本近代の暗さを追い求めた」と書いてあるけれど、ストーリー自体はそんなに暗い感じはしなかった。

しかし、文章に乾いたところが無く、そこは独特の陰りを感じる。動詞の使い方に今風の小説には見られないような美しさがある。漢字の使い方もほれぼれする。古井さんの小説も確かにどこかよぎるような気がする。

『黴』も読んでみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・明治~戦前
感想投稿日 : 2012年11月11日
読了日 : 2012年11月11日
本棚登録日 : 2012年11月11日

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