牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1970年6月2日発売)
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本棚登録 : 414
感想 : 30

独歩の『武蔵野』をいつか読もう。

柄谷行人『日本近代文学の起源』を再読していた時に、そう思っていた。そんな時に本を整理していて昔古本で買っておいてあった『牛肉と馬鈴薯』が出てきた。初めての国木田独歩。

ブクログ本棚に表示されている表紙は絵がついているが、自分が持っているやつは、もっとそっけない感じのベージュ色(?)の表紙のバージョン。他に自分が所有している新潮の本では、横光利一『機械・春は馬車に乗って』とかゾラ『ナナ』などがこのベージュの表紙だ。新潮文庫はたまに昔ながらのこの色のものがあったけれども、今でもあるのだろうか。

それにしてもごつごつとした文章で、真面目というかかたい感じがする。しかし、あまり嫌いではない雰囲気だと思った。特に『牛肉と馬鈴薯』『少年の悲哀』『春の鳥』など印象に残った。

中村光夫による解説があり「独歩の短編は、まったく文章による効果に頼ろうとしていないので」という文があり、そこがユニークだと続くのを見て確かにユニークだな、とは思ったが、文章をひねり出すにおいていろんなものに縛られている、という印象は終始受けた。『少年の悲哀』とか読んでいて「これ漢詩か?」と思えるようなとても格調高い文章が見られたりする。ユニークだとは思うが、何か独歩を支配しているものはあるのだろう、という感じを抱いた。それが何かはあまりうまくまとまらないが、たぶんそれ以前の文学にあたるものではないのかとなんとなく思う。あと『運命論者』を読んでいて、何となく夏目漱石の『こころ』を思い出したりした。

後ろのほうの短編は多少、斜め読みになってしまったかもしれない。初めのほうの短編がわりとどれも新鮮に思えたので、自身後半少しバテたような気がする。また時を置いて後ろの方の短編をじっくりと読みたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・明治~戦前
感想投稿日 : 2011年12月23日
読了日 : 2011年12月23日
本棚登録日 : 2011年12月23日

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