ミーナの行進 (中公文庫)

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本棚登録 : 1819
レビュー : 204
著者 :
花鳥風月さん 小説・恋愛/家族/青春   読み終わった 

主人公の朋子、ミーナ、伯父さん、叔母さん、龍一、ローザおばあさん…

『ミーナの行進』に出てくる人は皆それぞれ心のどこかに埋まらない隙間のようなものを持っていて、それがところどころに顔を出す。ミーナのか弱さ、叔母さんの病的なまでの誤植に対する執着、龍一の父に対する屈折した思い… その隙間が大きく口を開いていて、そこへ顔を埋めることで充足を得るような物語も世の中にはあると思うけれど、この物語に描かれる隙間は、後で時に笑いを交えながら語ることのできるようなものだ。「この傷、子供の時にちょっと転んだ時のやつ」などと見せびらかすような傷。悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。

馴染みがある土地が多いのもよかった。伯父さんの工場のある阪神尼崎は親戚が住んでいてよく行ったし、伯父さんの通うマンションのある江坂は自分のホームからごく近い。それゆえに彼女らのことをとても身近に感じた、というのもありそうだ。

読む前からそんな気がしていたが、たくさんの人に読まれるといいなと思える小説だった。

レビュー投稿日
2012年8月27日
読了日
2012年8月27日
本棚登録日
2012年8月27日
4
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『ミーナの行進 (中公文庫)』のレビューへのコメント

takanatsuさん (2012年8月28日)

花鳥風月さん、こんにちは。
気に入っていただけたようでほっとしました。
「悲しみに満ちた感情も、この小説の中ではどこか愛おしい。」
という言葉にとても共感します。
どうしてこんなに愛おしいのか不思議です。
そして、物語に出てくる土地に馴染みがあるのですね…、とてもうらやましいです。
私もこの物語の登場人物をもっと身近に感じたいなぁと思ってしまいました。

花鳥風月さん (2012年8月29日)

takanatsuさん コメントありがとうございます

「これはいいだろうな」と読む前から思っていましたが、最後も二人の前向きな手紙で締めくくられていて、事前の予想よりも上回って幸福感の漂う小説でした。とてもよかったです。

舞台になっている洋館のある芦屋は高級住宅地として知られていて、雰囲気のある場所です(ちょっと調べたらここらあたりを舞台にした小説がけっこうあるんですね)

私は庶民なので、工場の多い尼崎の南側や甲子園に直結している阪神電車などに馴染みがあって、そこらあたりが小説の中に出てくるだけで「おおっ、あのへんか!」となります。

うちの家族にもお薦めしてみます。

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