扉で引用されるのがパヴェーゼ、セリーヌ、ヘンリー・ミラー、ル・クレジオの文章。ブンガク的なものが始まる予感たっぷり。
管啓次郎さんのデビュー作だそうである。ブクログに来るようになってから初めて読んでみたいなと思った『本は読めないものだから心配するな』よりも先に手に取ってしまった。
ブラジルでの旅行記、滞在記のようだが果たしてそう名付けてもよいのかどうか。つながりのない短い章が重ねられ、形式も様々。詩のようなものもある。場所を巡って考えたことが次々に繰り出される。港千尋さんによるブラジルの人の表情や風景が切り取られたモノクロ写真が随所に挟まれて、見るたびにこれは異国の物語なのだと意識を戻される。
「名言だなあ」と思わせるようなフレーズが次々に登場する。文のリズムがいいのだろう。音楽のようだと言えるのかもしれない。解説を寄せているのがこれまた作品に音楽的なものを感じさせる古川日出男さんである。
自分からすると、読んでは内容を忘れてしまうような本でもある。残るのは、その本から得られる躍動のようなものだけ。そういうものを感じたい時、また読むのだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ(学者・翻訳家)
- 感想投稿日 : 2012年3月18日
- 読了日 : 2012年3月18日
- 本棚登録日 : 2012年3月18日
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