不幸な国の幸福論 (集英社新書)

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本棚登録 : 530
レビュー : 79
著者 :
windy-todayさん 論説・解説   読み終わった 

 ふうぅ~むぅ。。。やはり80過ぎの御大の言うことはどうしてもそれだけで重みがあるねぇ・・。内容を云々する前にその事実だけでなんだかもういろいろ評価めいたことを書きづらい。。。(笑)。
 ともあれ,著者は若いころ刑務所での精神科医として勤務していたこともあるらしく,その後は著作もし,名前は昔から知っているが,なかなかちゃんとした著作を読んだことはないと思う(今念のため再確認したが,やはりなかった。それにしてもずいぶんと書かれているんですね。)。
 新書としてよくまとまった,内容的にも読み応えが十分にある一作。
 前段は,最近の通り魔事件などにも見られる若者の精神性について考察する。ヒトのものさしを自分にあてがい,それで自分を評価しようとするところに幸福になれない自分の原因を求めようとする。確かに,その通りだ。世間の価値観で自分を測ることは,結局自分の価値観の放棄に他ならない。日頃から私が思っていることを端的に指摘してくれる。
 しかし一方で,現代社会は個人主義の時代とも言われる。行き過ぎた個人主義が社会性の欠如を産み,逸脱行動の正当化にも使われかねない時代である。なぜ今この個人主義の時代にあって,自分の価値観に自信がもてず,ヒトの価値観に依存するのか,その辺が逆説的に感じる。
 中間の政策論については,刑事政策敵な面など興味がある分野であるが,思いのほか大きな政府的な思想をお持ちのようで,その辺はやや自分とは違う感性のように感じながら読み進んだ。
 後半の老後の行き方,死を前にした生き方というくだりは,他の諸費用も一様に述べているが,さすがである。説得力をもって迫ってくるものがある。気概と気迫の伝わる筆致である。
 自分が老境を迎えたときにまた改めて戻って来たい本でもある。
 こうした骨のある戦中派が少なくなっていることは日本にとって本当に惜しまれることである。(多くの国民が,彼らにおためごかしに「遠のく戦争の記憶」などと奇麗事を言いながら,その実,軍国主義教育の名残を見るかのようなまなざしを向けてきたが,彼らの持つ静謐なまじめな空気と自分に厳しい生き方は,本当は日本人が本当は失ってはならないものであったと思う。)
 古武士を見るような一冊である。

レビュー投稿日
2010年3月9日
読了日
2010年2月26日
本棚登録日
2010年2月26日
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