丸投げされる学校

著者 :
  • 扶桑社 (2009年7月2日発売)
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感想 : 3
5

 教育界の現状と問題点等について一つの立場から自己主張を展開した本。特に戦後教育において一貫して肥大化してきた「子供中心主義」が増長させてきてしまったものを厳しく糾弾している。入門書やガイダンスとして全体像を捕らえるのに好適。
 国立市の教育長として左翼や市民団体の矢面に立って交渉し,悪代官視されたこともあり,市民団体の偏向振りの被害者の一人として,世に跋扈する「きれいごと」に対して痛烈に批判する。
 基本的には私も筆者に同意する。行き過ぎた平等主義や自主性尊重が結果として,きちんと教育しない教育につながっている現実はいまや覆いようもない。
 ただ,そこには日教組や市民団体といった旧来の妨害勢力のみならず,最近はそれらに育成された無定見な親や無気力な若者達が無意識にこれらの傾向に拍車を掛けるような言動を行うケースも散見されるように感じており,まさに「非常識」の世代交代・再生産段階にきているのではないか感じる時がある。恐ろしいことである。
 戦後,日本は人間の育て方を間違ったのだろうか?教育は20年でようやくその成果が確認できるきわめて長いタームで考えなければならない世界である。一年に満たない短命な内閣が続く中で,そういうスパンで政策を遂行できない日本には難しいことなのかもしれない。
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 論説・解説
感想投稿日 : 2010年2月25日
読了日 : 2010年2月25日
本棚登録日 : 2010年2月25日

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