片目の魔王と呼ばれた革命家、北一輝の評伝。あとがきに、北については、すでに多くの本が書かれているが ~ そのどれかに私がある程度でも満足していたのなら、この本が書かれる必要はなかったとある。本書は、その言葉を裏切らない文句なしの傑作。一般的に、北一輝は右翼思想家の大家のごとくイメージされるが、本質においては社会主義者である。北は、明治維新を裏切られた革命と捉え、来るべき第二革命の焦点を天皇制とブルジョワジーの打倒に絞った。そして、理論家として、国体論及び純正社会主義を記すが、方法論を持たぬ革命家でもあった。北にとってのナショナリズムとは、革命の為の方便であり、そのアクロバティックな方便を見抜けなかった青年将校が、北の思想を受け入れ、決起につながったことが右翼というレッテルに信憑性を与える結果となる。この人物のある種の胡散臭さは、この辺りに起源があるようだ。日本コミューン主義の最左翼、北一輝の特異性がよく書かれている本。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
大東亜戦争
- 感想投稿日 : 2009年10月21日
- 読了日 : 2009年10月21日
- 本棚登録日 : 2009年10月21日
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